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不思議な話 4「肝試し」

 これは、まだ若いころ職場の同僚6人で肝試しに行くことになった時の出来事です。

 行き先は、女性の霊をみたり滝の音に混じって女性の声が聞こえる噂のある場所でした。昼間も薄暗いのですが、名水の水汲み場として有名です。

 みんなで夕食をとったあと、出発しました。テンションはかなり高くなっていました。1人ずつ滝まで行ってみんなの所に戻るというルールを車中で考えていました。しかし、現地に着いてみると、駐車場から滝が見えていました。もっと怖いところを想像していたので、正直みんなのテンションがだださがりでした。そして、比較的私たちは街中に住んでいました。なので、夜に暗い山の中にいるだけで十分怖かったのでしょうが、みんなでいるので、怖さが麻痺していたと思います。また、この時のここが心霊スポットだとは思っていませんでした。

 そうして、ガッカリして肝試しをせず帰ることになりました。滝をでてからは、しばらく街灯のない山道でした。談笑しながら家路に向かっていると、進行方向の道の端に目がいき自然と会話が止まりました。そこには、オレンジのショールを着てスカートをはいた女性が、灯りも持たずに真っ暗な山道を歩いていました。女性は黒いロングヘアーで、なぜかびちょびちょに濡れていました。それを見た車内はパニックになりました。運転している同僚を急かして、山道を抜けたときようやく落ち着いてきました。不思議なことに、運転していた同僚は、その女性を見ておらず、必死に急かすみんなが怖かったそうです。

 その後、判明したことがあります。車の座席の位置によって見ている人が違いました。もちろん、見いている方向は一緒でした。左側に座っていたものは、前述した女性を見ました。左側に座っていたものは、髪の毛の短い紺色の半袖のポロシャツと暗めのズボンを履いていたそうです。また、パニックになったのは、女性が振り向きそうになったからでした。

 もしかしたら、人だったかもしれません。走行中に車は停まっておらず、すれ違ってもいませんでした。民家も近くにはありませんでした。どちらかしか見ていないことも怖かったのですが、運転していた同僚が、どちらも見ていないのが一番不思議な出来事でした。

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