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【エッセイ・ホテル今昔】 ① 値段の書かれていないメニュー

 つい最近のこと、京都市内のあるシティホテルのレストランで実際にあったことらしい、、
 
  10人ほどの法事のお客様、ご親戚と故人のご友人とでランチのご会食にいらしていた。
  お飲み物とセットコース以外のアラカルトのオーダーをとりに行ったアルバイトスタッフが、困った顔で戻ってきた。
「すみません、値段の入っていないメニューを皆さんに配ってくれ、と代表の方が言ってるんですが、そんなもんあります?」

「あるわよー!」 と、ベテラン主任さんが、深夜食堂のごとく、棚の上段から取り出してきてアルバイトスタッフに手渡した。

「本当にあるんですねー!?」とビックリ顔で受け取り、メニューをキーインするボードのメニュー番号と品名を確認している。

「メニューの番号だけは、間違えんといてな、、」
そう言われたバイト君は、いつもipadでオーダーばかりで、手書きのオーダーシートなど、見たことも触ったこともない、DX世代。

 「メニューの料金なんてスマホのQRオーダーや、ホームページみたらすぐに、わかってしまうのに、 何で今頃、こんなんあるんですか?」
と、素朴な疑問。

  そこに超ベテランのマネージャーが、一言。
 「なんでやと思う?、、値段の入ったメニュー見せられたらな、招待された方は、気つかって、高い料金のものオーダーでけへんし、何でも遠慮のうと言われたっても、”ほどこしたる”ようになってしまうやん、せやからな、昔から普通はな、ホテルのレストランメニューちゅうもんには、値段なんちゅうもんはな、書かれてはいないもんやったん、」

 「今度君らが、彼女さん連れてきたらな、料金のないメニューだしたるからな、覚悟しとき、、最高級メニューだけの、、、」、と、ウィンクひとつ

  招待する側、される側、互いの心を想いやる、粋な気持ちがわかる客も
少なくなったなあ、と、、、、、、。


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