第十一章 暗示とはどんな事か(3)

しかるがゆえに、
一度病に罹ったものは
絶対に再発することを気にしてはならぬのである。
少しでも再発が気になる者は
再発すべき観念があるのであるから、
速やかにそれを除去して
それに打ち勝つ勇猛心を作る必要があるのである。
ここに
一会員の体験談を記して参考に供する事にしよう。
 
私の経験から 東京 田中歩兵少尉
軍隊の仕事は骨が折れて並大抵ではない、
ということはどなたもご存知であろうと存じます。

特に歩兵科は
種々雑多な兵器を
多くは身につけて運び戦をするのでありますから、
歩兵は殊更に心身ともに健全で
いかなる荒修行にも耐えられ
困難にあって増々喜ぶという青年であって始めて
その任にかなうと申すことができます。
このような心身を作り上げるには
山畑式心身鍛錬法が
最もよろしいと思います。
試みに私の経験をご一読ください。

私は幼い頃から軍人を志し
首尾よく少尉になることができましたが
その翌年不幸にも
左胸部乾性助膜炎に罹り
ついに職務を休み静養しましたが、
さらに心臓まで悪くなりました。

療養数ヶ月にして
ようやく治癒いたしましたが、
尚再発を恐れて思い切った仕事もできず
つねに味気ない
不徹底なその日その日を送っていました。

ところが、
山畑先生独特の心身鍛錬法によれば、
身体の病弱を根治するは勿論、
鉄石の胆力を養成することができると、
すでに山畑式を経験された大尉殿より聞き及び
即日とは言わず
早速先生の御膝下を訪れたのであります。

先生はご多用中にも拘わらず
懇切にご指導下され
聴講僅か3日で
たちまち心気大いに開け
生来の気弱の私が
病患困苦何物ぞという胆力ができ、
肉体も引き締まり
丹田に力を入れますと
石のように固くなる様になり
天下に恐れるものない
という気持ちになったのであります。

帰宅早々
忙しい初年兵教育が始まりましたが
終わりまで元気よく
勤め了せることができました。

途中中隊長殿は数ヶ月不在となりまして
中隊の教練はほとんど私一手でいたしましたが、
成績は決して他に負けませんでした。

その間風邪一つひかず
一度下腿に長さ5寸ばかりの
火傷を負ったことがありましたが、
自己治病法で
みるみるうちに治って
しまいました。

兵士にも2,3回催眠術をかけてみましたが、
全く我が思うまま自由自在になります。
私の母の腹痛も
一回の施術で即治いたしてしまいました。

炎熱の射撃名誉旗の争奪戦が
猛烈に行われましたが
炎熱にも負けず最後まで奮闘の結果
連隊一番の成績で
真紅の名誉旗は我が陣頭に翻っております。

尚再発を恐れて
久しく銃剣術等は致しませんでしたが
今度は奮って鬼のような兵士と
猛烈に稽古をなし
助膜炎を病んだ左の胸は盛んに突かれましたが
身体は増々強健になり
助膜炎など何処へ飛んだか跡形もありません。

また富士の裾野の野営地での
一日の隙を利用し中隊の兵士と富士登山を決行し
一夜不眠で登山し
私が一番早く頂上に登りました。

この無限の幸福を味わい
歓喜に満ちた生活を送ることができますのも
ひとえに山畑式心身鍛錬法のおかげと
感謝の言葉も持ち合わせないのであります。

読者諸兄よ!
私の経験によりましても
この道の効果は覆らべからざるものがあると
信じるのであります。

病弱なる者は
この鍛錬法によって
回春の喜びを味わい
無病の者もこの心身鍛錬法を修得なされたならば
荒修行の軍隊生活でさえも
何の苦もなくやってのけられます。

皆様の中には
将来軍隊生活をせらるる方もありましょうが
その前に是非この心身鍛錬法を修得なさい、
そうすれればきっと
愉快に何事でも確信をもって処理することができ
しかも抜群の成績を修めることができます。
この鍛錬法は軍人には最も愛ふさわしい
修養法であります。

また軍人でない方でも
軍人のような心身を持ってイられれば
社会の優勝者となれるではありますまいか。
未だこの道を修められていない方のために
些少なりともご参考になえば幸甚であります
(編集者より。田中少尉は抜群の成績をもって
トントン拍子に大尉になりました)。

※戦前の空気を反映したコメントに思えるが、心身鍛錬法の効果を示している。

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