消化機能に及ぼす精神作用(1)

心に
大きな心配や恐怖のあるとき、
激高した時、
その他精神的に非常事件のある時などは、
どんな空腹の時でも
またどんな好きな飲食物でも
食べられもせず、
飲めもせぬものである。

また梅干しや砂糖を見たとき
また自分の大好物を見た時などは
これを食べなくとも
唾液が盛んに出てくることがあるものである。

酒の大好きの人などは
酒の話を聞かせただけでも
胸のあたりでグーグーと鳴り出す、
ついには舌鼓まで
打つようになることがあるものである。

右のごとき現象は、
いずれも
精神が消化機能に左右する結果である。

別に消化機能に関する疾病がなくとも、
精神的に苦労している者は、
如何に栄養のある物を食べても
身体は痩せるものである。

そして結局は生理的に故障が起こり
すなわち病気になるのである。

これ、皆精神が
消化機能に作用する結果である。

また、大嫌いなものを食べれば
吐いてしまうことがある。
万一吐かないで
これが胃の中に入ったところで
良く消化もせず、
良く吸収もしないものである。
故に大嫌いなものを無理に食べると
下痢することがある。

これみな精神が消化機能に作用する結果であるのである。

このように消化機能は
精神に支配されるものであるから、
如何栄養の多いもので
且つ消化しやすいものでも
これを大嫌いなものが食べれば
消化もせず、
身体の栄養にもならぬものである。

栄養どころか
いたずらに消化器を疲労させるから
結局身体のためにならず、
かえって害になるものである。

これに反して、
大好物であれば、
たとえ滋養分の少ないもので
よく消化し吸収して
身体のためになるものである。

○新鮮な鶏卵を食って下痢した実例
某婦人が産後の経過が悪く、
某産婦人科医の診察を受けていたが、
ますます悪化し甚だしい衰弱に陥って
会長を頼みに来た。

会長が行って
その病人に種々問いただしてみると、
下痢をしているのである。

勿論下痢を止める薬も呑んでいるのであるが、
下痢は治らないために
増々衰弱するのである。

会長
「貴女は胃腸が悪くて下痢をしているのではありません。
なにか嫌いなものを
無理に飲むか食べるかしているでしょう?」
と問うた、患者
「その事、私は卵が大嫌いで
吐きそうになりますが、
医者様にのめといわれて
我慢して呑んでいます」
と答えた。

会長は
そんな大嫌いな卵は止めて、
好きなものなら
過食せぬ程度に何を食べても
差し支えないことを説明して
注意をしてやった。

するとその長い間の下痢も、
翌日からすっっかり治ってしまったのである。
従って段々身体に力が付き、
5,6日たつと
庭を散歩するようになったのである。

勿論、会長が施術もしてやったのであるが、
とにかく、この夫人は
胃腸が悪くて下痢をしてたのではなく、
嫌な卵を無理に食べていた結果であった
という想像ができるのである

。如何に滋養に富んだ鶏卵の黄身で
もこれが大嫌いの彼の婦人の胃腸
は之またそれを大いに嫌うのである。
従って消化作用も吸収作用も止めてしまう、
故に身体の栄養がとれなくなる、
かくして増々衰弱に陥りつつあったのである。

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