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【直樹の日常.26J】第一印象

職場には、10時以降に来てくださいと言われている。
着いたのが9時55分だ。
どうするか。思い切って入るか。

誰もいない。
そうか、こういう事か。
しばらくして職員の古岡さんが顔を出す。
「村上さん、早いっすね」
ラフなTシャツと、黒のスキニーパンツが似合っている。
最近朝晩は涼しくなってきたが、
昼間はまだまだ暑く、着るものに迷う時期だ。
職場のクーラーが結構強めにかかるという事もあり、
直樹は今日長袖。
すこし涼しくなって物寂しいこの季節が好きだ。
「今日は結構人が来ますよ」
「いつも2・3人くらいですよね」
「そうなんですよ、月曜日は結構多いんですよ」

直樹はいつものパズルに取り組んでいる。
くだんの女性利用者が入ってくる。
自分からはあいさつしない。
直樹が声をかけると、頭を少し下げる。
この女性の白いTシャツには
誰だかわからないが顔が派手に描かれている。
黒の細身のパンツは地味ながら、Tシャツの主張は強い。
この白と黒のコントラストと地味と派手のギャップが
パンクっぽい印象を与えている。
「服って個性が出ますよね」
古岡さんがパソコンを触りながら話す。
女性利用者は黙っている。
「静かな自己アピールですよね。
人にどう思われたいかが出るんじゃないですか」
「第一印象は見た目がほとんどって言いますもんね」
直樹は常々、服の印象が大事だと思っている。

まだ名前も知らないこの女性利用者は、
ダイヤモンドアートに取り組んでいる。


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