父と死別した息子の絆
父は今、たくさんの弟の面影の中で寝ている。
弟の部屋だった部屋が、今は父の寝室だ。
弟がピースをするたくさん写真が見守る中で今も、毎日父は寝起きしている。
何年経っても、親というのはそうなのだ。
息子の思いは別れたあの頃のままなのだ。
どれだけの長い月日を、息子を思いながら生きてきたのか。
その時間を思うと気が遠くなる。
わたしは父にもう何もできない。
孫をたくさん抱かせてやりたい。
そうすることが父を癒すことなのだとずっとそう思ってきたけれど、違う。
もう、全く別のものなのだ。
我が子というのは。
子どもながらに忘れられない光景がある。
思春期の荒れに荒れた時期も、成長期で足が痛いといって寝れない時期は、父が寝付くまで弟の足をさすっていた。
小さな時も喘息がちで、発作を起こして眠れない夜、背中をさするのは決まって父だった。
夜中、トイレに起きたら暗闇でひたすら父が弟の背中をさすっていた。
親子というのは、こうやって絆を紡いでいくんだと思う。
父と、弟はそれほどの深い絆があったのだ。
もうそこに嫉妬はない。
むしろ16年間という短い時間しか生きれなかったけれど、すごく幸せだったんじゃないだろうかと思ってしまう。
わたしはきっと父がいつかこの世を去る時が来た時、思うだろうな。
父との別れは死ぬほど寂しいけど、心のどこかで。
きっとわたしは思う。
お父さん、やっと弟と会えるね、って。
弟のことを綴るなら、父の視点が必要だ。
わかっていた。
わかっていたけれど、父の傷の深さを嫌というほどそばで見てきたわたしにとって、
父と向き合うのが怖く、わたしがずっと避けていたのだ。
その父を通らないとこの作品は完成しないと思った。
「お父さんあのさ…」
そこから、わたしと父の繋がりが始まる。
ずいぶん時間がかかってしまった。
たくさんの気持ちや、言葉を飲み込んできた。
まだ間に合うだろうか。
続きは、書籍にて。
手に取っていただけたら、嬉しいです!!
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