見出し画像

#ハッスルジジィのお喋りタイム No.9

『バスターミナル』

駅前のバースターミナルには、至る所からバスが集まってくる
そして、多くの乗客を乗せて、様々な方向に散っていく
新幹線が到着すると、改札口から乗客たちが湧きだしてくる
性別、年齢、目的などバラバラだ

しかしよく観察してみると、曜日や時間帯では、ある一定の法則が見えてくる
月曜日の午前中は、出張らしきビジネスマン風の男性が多くみられる
朝夕には、通学する学生たち
演歌歌手のコンサートが開かれる時は、元気なお年寄り方
週末になると、グループや家族連れの観光客が目立つ
人が動けば、何がしかの商売が成立する

多くの人達が、自分の目的地へ向かうバスに乗り込む
そこには色々なドラマが展開される

あるバスでの出来事
バス停で、待っていた客を乗せ出発しようとした時だった
ボサボサ頭で、ヨレヨレの服を着た
一人のジジイが、バスの行手を遮って無理やり乗り込んできた
一見ジジイに見えたが、よく見ると未だ50代後半の男だった
当然、すでに乗っていた客は、あまり良い気がしない
しかし、これが若くて綺麗な女性であれば、男性陣の対応はウエルカム

遅れて無理やり乗り込んできた、そのジジイは、座席が空いてなかったので、なんと若い気弱そうな青年の真横に立ち、ため息をし続けた
堪り兼ねた青年は、“どうぞ”と言って、そのジジイに席を譲った
ジジイは、満足そうな顔をして、お礼の一言も言わず、当たり前のようにドカッと座った
おまけに古ぼけたパンパンに膨らんだバッグを、通路の中央に無造作に投げ出した

すでに席を譲った青年は、関わりたくないのか、バスの前の方に離れて行った
すると、今度は周りに座っていた乗客たちが一斉に横を向いたり、マスクをかけ始めた
なんと、そのジジイの体臭が、とてつもなく臭かったのだ
たぶん風呂に入っていないばかりか、着ている服も洗濯とは縁遠いようだ

暫くすると、周りの客たちが、一人立ち、二人立ちして、遂にそのジジイの2m四方には誰もいなくなってしまった
すると、そのジジイ、大胆にも両手両足を投げ出して、大の字の恰好で周りの席を独占してしまったのだ
そして安心したのか、そのまま下品なイビキをかきながら眠ってしまった

このバスは、田舎の山奥行きのバスだった
終点近くで、目を覚ましたジジイは、ビックリ仰天
もともと乗るバスを間違えた上に、不覚にも眠ってしまったからだ
おまけに、このバスは、この路線の最終便
他に客は誰もいない
このジジイ一人だけ

あたりは、もう薄暗くなってきている
吹く風も、少しヒンヤリ感じる
遠くで鳴いているカラスの声が、もの悲しく聞こえる

こんなに遠くまで来るはずじゃなかったので、運賃も払えず、宿に泊まる金もない
ましてや、こんな田舎に宿など一つも無い
当然、明日の帰りのバスに乗るお金など、あるはずがない

この後、バスの運転手さんとの問答が続いた
しかし、なんと言われても、金など無いものは無い
終いには、このクソジジイ、開き直ってしまった

さぁ、この後どうなったのかは、来週のお愉しみ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?