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#あなたは、どう思いますか?

『寡黙な二人』

昨日、妻と近くのレストランにランチを食べに行った
昼前で、室内は広く、テーブル席も
沢山用意してあったが、ほぼ8割方がお客さんで埋まっていた

周りは、数多くの“おば様族”がところ狭しと、屯(?)していた
聞こえてくる話の内容も、
 ・病気の話
 ・孫の話
 ・今まで食べに行った事のある、 
  気に入った店の話
 ・(今は、どこかで仕事をして
   いるだろう)旦那様の悪口
 等が、殆どだった

そして、おば様族は話が盛り上がってくると、トーンが高くなり、更に人の話が途中であろうとなかろうと割り込んで話しまくる
他人の話など、相槌をうっているようで、殆ど耳に入っていない
折角の美味しい料理が、冷めてしまうんじゃなかろうか、思わず要らぬ心配をしてしまう

その時だ
自分たちのテーブルの通路を挟んだ反対側のテーブルに、二人の若いカップルがやってきた
二人は向かい同士に座った
これから、さぞ話が尽きないぐらい見つめあって、会話を楽しむのだろうと予測した

ところがどっこい
二人は、向かい合わせに座るや否や、お互いのスマホを取り出し、
いじり始めた
その状態が、しばらく続いた頃、店員の女性が、オーダーを取りに来た
“さぁ、ここいらで二人は、相談をしながら喋るぞ”
と思いきや、その店員さんには、個別に自分の分を注文していた

その時も、全くスマホから目を離すことなく、機械的に声を発していた
その後も、料理が届くまでの約7~8分の間、二人の会話は無く、ただスマホを眺めているだけだった

遂に料理が届いた
“さぁ、今度こそ喋るぞー”と構えていたが、無言のままスマホを片手でいじりながら食べはじめた
その無言状態のまま、時間は淡々と過ぎ去っていった

そして、二人が食べ終わったかと思うと、女性が先頭に立ち、すたすたと出口に向かって歩いて行った
残された男性は、注文票片手に、
すごすごと後を追いかけて行った

外に出た二人が、ガラス越しに見えたのだが、雷鳴が鳴り響き、更に雨も強くなっていたので、ひとつしかない傘に、身を寄せて車に向かう二人の姿がチラッと見えた
なぜか、少しホット安心する66歳のオッサンの姿が、ガラスにダブって映っていた

ところで、ご飯を食べに来て、全く会話をしないのは何故だろう"と
ふと”考えた
 ・ご飯を食べに来たのであって、会話をしに来たのではないから?
 ・お互い、スマホを使って、他人に聞かれないようにラインでやり取りしていた?
 ・お互い、会話のネタが無く、スマホをいじるしか、やることがなかった?
 ・二人の関係は、破局寸前で最後のランチに来ていた?
色々考えてみたが、どうもしっくりこない

その時だった
“あなた、なんか話はないの?”という、妻の投げやりな声が突然飛んできた
自分も、前方の無言な二人に気を取られ、目の前にいる妻と殆ど喋っていなかったのだ

気分を悪くした妻は
“あなたが支払ってね”と捨て台詞を残して、サッサと立ち上がって出口に向かって行った
注文票片手に、妻に追いすがる
見っともないジジイが、しびれた足を引きずっていく姿を思い描いてほしい
周りの“おば様族”も、話に夢中になって気づかないふりをしながら、実はしっかりと観察していたに違いない

“クソー、あの無言カップルの奴らメー”
傘の無い自分は、雷鳴が轟き、雨が強く降る中を、涙をこらえて車に小走りで向かった


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