天使のお散歩


「なんか面白いこと、ないっかなぁ?」

天使見習いの...は、今日は大失敗をやらかして、天上界をちょこっと抜け出し、地上を、かろやかにその翼を羽ばたかせ、ただいま、逃走中!

 「あの娘、なんか...緊張感、半端ないぞ」

公園のベンチに、一人で座っている少女を見つけると、隣にちょこんと腰かけました。もちろん、その姿は彼女には見えません。少女が手にしている、スマートフォンをのぞきこみます。

「こんにちは、元気?......」

天使には、彼女がなにをやろうとしているのか、すぐにわかりました。そうです、告白です。

「ダメダメっ、そんな遠回しな言い方じゃ」  

天使は、あきれ顔をしています。

 「あんまり上手くないなぁ、文章が硬いよ。私ならこうするんだけどなぁ。こうした方が、うまく伝わるんじゃない? 」

アドバイスをいっぱいします。けれども、 彼女にはちっとも伝わりません。

天使は怒り出しました。

「なんで?あなたは、私の声が聞こえないの?
それとも聞こうとしていないの? 
聞こえているのに、知らないふりをしているの?」

どうやら...この天使は、ちょっとだけ怒りっぽいみたいです。

「 簡単なのに、本当に簡単なのに、自分の心に正直になって、 それを伝えればいいのよ!」

その最後の言葉だけ、少女に届きました。そして彼女は、一言一言、大切に言葉を紡ぎ出しました。

送信された、少女の想いのいっぱい詰まったメッセージを見届けると、天使は、ニッコリと微笑み、空へと帰って行きました。

そうして、少女が手にしているスマートフォンには、「僕も......」という言葉たちが光輝いていました。

おわり

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