椎名林檎という触媒

椎名林檎のことが好きか? と問われるとだいぶ答えに窮する。
世代なのでとりあえず椎名林檎名義のアルバムを初期はある程度聴いていたし、東京事変にせよ『閃光少女』とかは好きだ。何曲かは好き。とは言え、直近の楽曲はだいぶ聴いていられなかったし、椎名林檎が好きなんです、と人から言われるとだいぶ身構えてしまう。お、お前椎名林檎が好きって面と向かって俺に言わないでくれよ…って人生で何度思った事か!
椎名林檎本人が、なのかEMIのチームかなのかは分からんけども、イメージ操作が滅茶苦茶に上手く、愛国っぽいノリをやらせればイキってそれを上手く料理するし、若いときはちゃんと破滅の空気を身に纏っていた。
椎名林檎自体に思想信条があるわけじゃなくて、アートに魔法をかけるためのフレイバーとして時に伝統文化や90年代の露悪を振りまいているだけ、というのが自分的な椎名林檎感であって、ああ、この人は「触媒」として滅茶苦茶優秀だなあ、というふうに見ている。
とは言え、椎名林檎好き? と聞かれると、いや、どうなんだろうな…ってなっちゃうよな。椎名林檎を好きというのは俺の中でだいぶハードルが高いカミングアウトに思える。好きな曲はある。同様に嫌いな曲もそれなりにあるので関心はあるけどね…みたいな答え方になってしまう。やたらと豊かさを肯定する姿勢も鼻につく。だって、俺は金も社会的地位もない無敵の人に等しいおっさんだから
単純に椎名林檎って痛いじゃん。あのなんかやたらとキメ顔でつっかつっか歩くところとか、ええ…って引いてしまうんよな。あのイタさを好きと思えるかどうかってかなり人によると思う。
椎名林檎のライブ行ってなんかの旗振り回すくらいなら夏コミで臭いオタクに挟まれる方がまだ俺の美意識的にはマシだ。
俺はその時のメンタルで良いと思えるかどうかが決まる。メンタルに余裕があればあのイタさも含めて格好良い、と思えるしメンタルがささくれていれば頭の悪い音楽にしか思えない。
そういう意味でも、麻薬的な魅力はあるんよなぁ、ってなるけども、まぁどうなんすかね。

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