「お笑いライブのブロックチェーン化」が、今生まれるべき理由

00.はじめに

尾原です。私はGoogle,マッキンゼー,リクルート,楽天執行役員として新しい事業の立上げ、投資を歴任、バリ島シンガールをベースに「モチベーション革命」「アフターデジタル」など「つながる時代の新しい働き方・自分らしい生き方」を実践・発信しています。

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みなさんと つながる時代の未来を楽しめたらです。

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<尾原のアフターデジタル時代のモチベーション革命>


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01. 今日の解説

今日は、西野さんの新しいビジネスがヤバいので、それを解説したいと思います。

この「コロナの時代」にものすごい文脈が合ってるし、このコロナというのは「新しい世代にビジネスの主導権が移る」ことだと思うんですね。
今までの、既成の価値観では通用しない。だとしたら新しい価値観に委ねなきゃいけない。じゃあ、新しい価値観に基づいたビジネスは何なのか?

今週は2つ、解説していきたいと思います。
「お笑いライブのブロックチェーン化」が、今生まれるべき理由
「読み聞かせ」が、Googleを超えた広告ビジネスになる理由

「西野亮廣エンタメ研究所」では、具体的な内容は一年経たないと外で話をしちゃいけないことになっているんですね。今回はSalon.JPで西野さんとご一緒させていただいてるということで、特別に解説いたします。なので、ここで話した中身そのものは内緒でお願いします。

というわけで、「現在進行形の天才」を解説するのが好きな尾原が興奮しまくってるという話なんですけど(笑)。

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「お笑いライブのブロックチェーン化」って何?
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単純に言うと、「お笑い」って、だれでもテレビに出ると見れちゃうものなんですよね。
お笑いライブのブロックチェーン化とは、「お笑いライブを一部の人しか見られないようにしましょう」ということです。

「ブロックチェーン」ってビットコインでしょ? 価格が上下してヤバいんでしょ? って思うことが多いと思います。だけど、ブロックチェーンの本質は何かと言うと......

今まではDVDやCDなど、音楽を楽しもうとすると、モノを買わなければならなりませんでした。漫画も書店で買わなきゃいけなかった。でもインターネットの時代になって、コピーが簡単にできるし情報を遠くからつなぐことができるようになりました。
インターネットは、「コピーできる価値」がものすごくよかったんですよね。
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例えば「Kindle」を発売日の深夜0時にダウンロードして読めるのも、コピーできるからこそのインターネットのよさであり、これがめっちゃ共有(Share)する文化を生みました。
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その一方で、インターネットによって生まれたビジネスは、遠くに広げることによって薄くなってしまうところがある。こういうのを、「フリーミアム(Freemium)」と言います。(基本は無料だけど、お金を支払うことでサービスの継続利用や追加機能が利用できるビジネスモデル)

もともとのビジネスだと届けられなかった。でも、インターネットだと情報をコピーすることにコストがほとんどかからないし無料で配れるから、いろんな人に届けることができる。

わかりやすい話で言うと、西野さんは「Voicy」を無料で配信していますよね。「なんで、あそこまでやってるの?」って言うと、もちろん「ディズニーを超えるため」です。

無料で配信することで西野さんの世界観を好きになり、西野さんの冒険を応援したくなり、そこを通してプペルが大好きになる。「じゃあ、プペルを応援しよう!」と言って、プペルが始まった時にみんな映画館に向かう。そこでお金を払う。

というふうに、熱狂的なファンを作って、その人からお金をもらうために裾野を広げていく。それが「フリーミアム」といって、インターネットが可能にした新しいビジネスだったんですよね。

あともう一個大事なのが、 GoogleとかFacebookが生み出した「広告」です。

なぜYouTuberが配信で1億円とか儲かるのかと言うと、一回再生すると「広告」が出るので、その広告によって収入を得ることができるんです。

だから広告を見ていただくと、1PVあたり(最近幅が広くなってきたんですけど)0.1円から0.8円くらいもらえる。仮に1PVあたり0.3円だすると、10万回再生されれば3万円もらえるんですよね。

だけど、これだと結局「めちゃくちゃリーチする人」しかビジネスにならないんです。要は、裾野を広げられる人しかビジネスになりません。

そうすると、「どうすればシェアできるんだろう?」という文化に変わってしまう。けど、やっぱりお笑いって「頭がおかしい人」が生む世界じゃないですか? 「頭がおかしい人」って最初は理解されないんですよね。

人に理解されない人がシェアされようと思うと、どうしても他の人に寄せてしまう。これが、お笑いにとっては危険だと僕は思っていて。

最初はだれにも理解されないようなヤバいモノ(ヒト)は、時間が経って「熟成」されて、こなれてきた時にものすごい爆発力を生みます。

「まだシェアされるには時代が追いついてない人たち」を助けていくことできるのが、実はこのブロックチェーンのスゴさです。
ブロックチェーンの価値は
インターネットの「シェアできるよさ」を保ったまま、「コピーできない価値」
「リンク(Link=遠くにつなげる)」の価値
「だれにもコピーできないから、あなたしか持ってない」ってことができる価値

だから、「ビットコイン」(仮想通貨)とは違うんですよね。ㅤ
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「お笑いライブのブロックチェーン化」が、今なぜ生まれるのか?
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なぜ「コピーできない価値」にモノが動くのか?
これはやっぱり「希少性(レア)」なんですよね。
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レアなモノって、めっちゃ欲しいじゃないですか? もっと言うと、レアなモノの中には「一期一会の価値」が出てくる。この「一期一会」って難しい言葉です。でも、日本人は大好きです。それはなぜか?

「そのとき、その場でしかありえない、『おもてなし』を私しか受け取らなかった」

という茶道の世界だからです。「一期一会」のもう1つの大事なところは......

☑️ここから「お笑いライブのブロックチェーン化が、今なぜ生まれるのか?」という話に入ってきます。

「私しか受け取らなかったモノ」という価値がある。この価値は、茶道の世界で生まれました。人がわからなかったモノがやがてわかるようになり、熟成して時代に追いつく。熟成と言うと、「ワイン」ですよね。

つまり、ワインや茶道のビジネスと、「お笑いのビジネス」は一緒になれるんです。

☑️「ワインのビジネス」はいつ生まれたのか?🍷
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これには諸説あるんですけど、基本的にはペストのあとのメディチ家です。いわゆる“貴族”が生まれてきて、その貴族があり得ないくらい搾取することによってお金を持ったために、遊ぶことがなくなっちゃったんです。
遊ぶことがなくなった時に行き着いたのが、「アート」に投資することや「ワイン」に投資することだったんですね。

☑️「茶道のビジネス」はいつ生まれたのか?🍵
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戦国武将がガチで戦い合ってる中で、織田信長というスーパー天才がいました。戦った時のご褒美として「土地」を与えるんですけど、土地は限界がありますよね。やべえ、もう渡す土地がねえよ......ってなった時に、

「実はこの茶器、ありえない瞬間の閃きの中で生まれたモノで、お前しか持ってないんだよ」ということで、ご褒美として茶器をあげたんですね。

つまりビジネスは、あるモノに限界がきて限界を突破するときに、「機能的な価値」より「余剰的な価値(感情価値)」を作るために生まれるんです。

「機能価値」<<「感情価値」がビジネスを作るという典型例がこの「茶道」と「ワイン」で、機能価値に限界があった時に乗っけていくモノなんですね。

すごく分かりやすいのが、けんすうさんが言っていた限界効用(限界効用逓減の法則)の話です。

📝西野亮廣ブログ | AMEBA
「キンコン西野さんが自分にお金を使わない理由 BY けんすう」


味だけを純粋に見たときに、「そこらへんで売っている300円の牛丼」と「500円とか1,000円の牛丼」を出すと、「この肉おいしいな」って価値が上がる。けど、これが「2,000円、3,000円の肉」ってなってきた時に、だんだん味の差がわからなくなる。こういうのを「限界効用」と言います。

「機能的なモノの差」って、差がわからなくなってきたら、どんだけお金を追加しても価値がプラスになりません。だから、西野さんとかはお金に興味がないんです。

この話の中ですごく大事なことが、学びだけは価値がずっと上がり続けることです。
「希少性がある」「お前しか持っていない」ことで、価値がギュイーンって上がっていくのにプラスアルファして、

「この茶器、分かるか?」
「このワイン、分かるか?」
「このお笑い、分かるか?」

ってことの中に、価値を作る。学ぶことに価値を作るんです。

“お笑い”は、そのときにみんなで共有して「楽しかったねー!」って価値もあるんだけど、「わかればわかるほど奥が深いモノ」や「あの狂気性、あの変態性」という、岡本太郎みたいなお笑いもある。こういったところにちゃんと価値を作っていくことが大事というのが価値の話です。

じゃあ、これが 「コピーできない価値」と、どうつながるのでしょうか?

「ワインや茶道のビジネス」は、どちらもコピーできなくて希少だから「この年は1年間に5本しか作れなかった」と言うと、価値が上がるわけですよね。つまり、コピーできないことによって価値が作れるんです。

だから、ブロックチェーンができることで、例えばシンガポールにいる僕が東京にいるけんすうに

尾原:「このビンテージもののお笑い、お前ならそろそろ分かるステージだから、譲るよ!」
けんすう:「尾原さん、いいんですか? こんなものいただいちゃって。これ、10本しかないヤツですよね?」

と価値が生まれてくるわけです。


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「お笑いライブのブロックチェーン化」が創る、新たなパトロンの世界
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今大事なことは、次に生まれる、「人には理解されないようなクレイジーなお笑い」を応援することです。
それを応援するためには、インターネットだとどうしても「裾野が広く作れる人」が力を持ってしまう。

裾野を広くすることは、理解されやすくすることなんですよね。そうすると、「熟成」が足りないから短命に終わる方が増える。
でも、今は理解されなくても熟成すれば価値が生まれる可能性があると、理解できないものにお金を投資しようってなるんです。

「将来、お笑いとして大ブレイクするかもしれないこの人の初期ライブ作品は俺しか持っていない」となると、「お前、月10万やるから好きにすればいいよ」ってなる。ㅤ
なぜならば、その人の初期ライブ作品を持ってるだけで、将来「お笑い」が1本100万円で流通するかもしれないわけですよね。

これが、新たなパトロンの世界です。
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このコロナの時代やペストの時代ってみんな引きこもるから、世の中の価値観と擦り合わない、ものすごい凝縮した人には今は理解できない「新しいモノ」が生まれるんですよ。

ペストの時代、フランスではワインが生まれ、日本では茶道が生まれました。
コロナの時代、もしかしたら西野さんが、「お笑い」をワインのような茶道のような世界に変えてくれるかもしれません。ㅤ
でも、それはブロックチェーンという「情報をコピーできないけど人に渡せる価値」を生んだからだって話です。

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(本投稿は、尾原サロン2020年4月27日解説動画の記事化です)

■参考リンク
📝過去ログ「西野亮廣エンタメ研究所」/note「芸人の『単独ライブ』が資本になる世界」

📝過去ログ「西野亮廣エンタメ研究所」/note「一人のお金持ちに売る『ヨーロッパの絵画』」


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<尾原のアフターデジタル時代のモチベーション革命>

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