あれってなんだったの? 山下達郎⑥
【★節Cの解釈と感想②】
山下は★節Bで「喜多川に対する尊敬と感謝」を話していました。そこから繋がる★節Cで、いきなりSMAPの名前を出しましたが、たぶんこれは、やはり「例えば」の話なのだと思います。
山下がこの節で話しているのは、SMAPうんぬんではなく、喜多川がやってきた事務所の「正直残念な」事態(近過去からの現状)についてなのでしょう。
そしてその「正直残念な」現状について、けっこう苛烈に批判している、というもののはずです。
なので翻って、ここでポイントになるのが「SMAPの皆さんが解散することになったり…」という「具体例」です。
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喜多川の事務所のタレントグループが解散したのは、なにもSMAPに始まったことじゃありません。あれこれ思い出すまでもなく。
山下が喜多川に尊敬を覚えたのは60年代とのことですが、以来、解散したグループはいくつもあります。あるいは「解散はしてないけど事実上の解散(活動停止)」をしているグループはあります。初代ジャニーズ、フォーリーブス、シブがき隊、少年隊、光GENJI…などなど。
にもかかわらず、なんでSMAPの名前を山下は挙げたんでしょう?
これは逆方向の歴史からも言えて、例えば山下発言にもあるように、ごく最近ではKing & Princeの分裂が話題になりました。
「じゃあキンプリでいいんじゃないの? なんでSMAPまで戻す?」です。
SMAPの解散以降も、嵐、V6などの解散/活動停止、グループの分裂や退所者が続いたのは周知です。
なんでそれで、山下はSMAPの名前を挙げたのか?
ま、ここで出す名前はSMAP以外にないから、ですよね。当然。
じゃあSMAPの解散と、それ以外のグループの解散/活動停止や、退所者の出現とは何が違うのでしょうか。
とまで話せば、もはやゴールは目の前です。
SMAPの解散/メンバーの退所は、マネージメントサイドの内紛によっていたという、それです。
加えるなら、それまでのグループが「メンバー個々のソロ活動が忙しくなった」「売上が落ちてきた」などの原因から、いつのまにか解散/活動停止していたというのと、SMAP以降のそれは違います。
当のSMAPはもとより、嵐もV6もキンプリも、「メンバー個々のソロ活動が忙しくなっているのも確かだけど、グループとしての活動も十分に盛ん」で、固定ファンも多く、つまり売上が落ちてるわけでもない、ものです。というかはっきり言えば、圧倒的な人気を保っている、稼ぎ頭です。
なぜそんなグループが活動を止めたり、分裂・解散するのかと。解散や分裂、退所の理由がごく個人的なものであれ、ここには十分に「マネージメントサイドの問題」も含まれるでしょう。つまり稼ぎ頭たちをあまり簡単に手放してしまっている、印象がある。
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なので山下が取り上げたいのはきっと、
・SMAPの解散騒動あたりから、喜多川の事務所はどうなってんだろうねえ
ということですよね。つまり、
・喜多川のマネージメント、プロデュース、ディレクションを尊敬した(★節B)
・でもSMAPの解散騒動あたりからあの事務所どうなってんだろね(★節C)
という文脈になっているということです。
むろん喜多川が亡くなったのはSMAPの解散後ですが、喜多川死後の事務所体制はその時期から作られていた──というより、「喜多川後」の体制を考慮した内紛こそがSMAP解散騒動だったと、考えていいものです。
そんな事務所体制の下でいくつかの人気グループが解散/活動停止し、退所者が出て、最近ではキンプリが分裂したと。
そう読み直せば、山下の、不思議な話の飛び方も腑に落ちます。むしろきちんと筋が通っていて、少しもヘンではない。
そして、こういう文脈でそういうことを話された時、もっとも「ぐさっ」と来るのが誰かと言えば、まああの人ですよね。
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