あれってなんだったの? 山下達郎②
山下発言の「ほぼ全文」はこうです。
★前文
この度、私のオフィス(カズノ注:「私が所属しているオフィス」の意でしょう)、スマイルカンパニーと業務提携をしていた、松尾潔氏が契約終了となり、そのことで、私の名をあげたことで、ネットや週刊誌等でいろいろ書かれております。
私はツイッター、フェイスブック、インスタグラムといったものを一切やっておりませんので、ネットで発信することができません。そのため、私の唯一の発信基地である『サンデー・ソングブック』にて、私の話をみなさんにお聞きいただこうと思います。
少々長くなりますが、お付き合いください。
★節A
まずもって、私の事務所(カズノ注:前掲)と松尾氏とはですね、彼から顧問料をいただく形での業務提携でありましたので、雇用関係にあったわけではない。
また、彼が所属アーティストであったわけではなく、解雇にはあたりません。弁護士同士の合意文章も存在しております。
松尾氏との契約終了についてはですね、事務所の社長の判断に委ねる形で行われました。
松尾氏と私は直接話をしておりませんし、私が社長に対して契約終了を促したこともありません。
そもそも彼とは長い間会っておりません。年にメールが数通という関係です。
今回、松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題に対して、憶測に基づく一方的な批判をしたことが、契約終了の一因となったことは認めますけれど、理由は決してそれだけではありません。ほかにもいろいろあるんですけど、きょうこの場で触れることは差し控えたいと思います。
ネットや週刊誌の最大の関心事はですね、私がジャニーズ事務所への忖度があって、今回の一件もそれがあって関与したのではという、根拠のない憶測です。
今の世の中は、なまじ黙っていると言ったもの勝ちで、どんどんどんどんウソの情報が拡散しますので、こちらからも思うところを、正直に率直に、お話しておく必要性を感じた次第であります。
今話題となっております性加害問題については、今回の一連の報道がはじまるまでは漠然としたうわさでしかなくて、私自身は1999年の裁判のことすら聞かされておりませんでした。
当時、ビジネスパートナー(カズノ注:スマイルカンパニーおよび当時の運営者・小杉理宇造のことでしょう)はジャニーズの業務を兼務しておりましたけれど、マネージャーである彼が、いちタレントである私に、そのような内情を伝えることはありませんでした。
性加害が本当にあったとしたら、それはもちろん許しがたいことであり、被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会等での事実関係の調査というのは必須であると考えます。
しかし、私自身がそれについて知ってることが何もない以上、コメントの出しようがありません。
自分はあくまで、いち作曲家、楽曲の提供者であります。ジャニーズ事務所は他にも、ダンス、演劇、映画、テレビなど、業務も人材も多岐に渡っておりまして、音楽業界の片隅にいる私に、ジャニーズ事務所の内部事情などまったく預かり知らぬことですし、まして性加害の事実について、私が知る術まったくありません。
★節B
私は、中学生だった1960年代に初代ジャニーズの楽曲と出会って、ジャニー喜多川さんという存在を知りました。
何年か後に初代ジャニーズの海外レコーディング作品を聞いて、私はとても感動して、この『サンデー・ソングブック』でも特集したことがあります。
1970年代の末に、私の音楽を偶然に聞いたジャニーさんに褒めていただいて、そのご縁で、数年後に私のビジネスパートナー(カズノ注:前掲)が近藤真彦さんのディレクターとなったことから、「ハイティーン・ブギ」という作品が生まれました。その後もジャニーズに楽曲を提供する中で、多くの優れた才能と出会い、私自身も作品の幅を大きく広げることのでき、成長させていただきました。
たくさんのジャニーズのライブに接することができたおかげで、KinKi Kidsとの出会いがあって、そこから「硝子の少年」という作品を書くことができて、昨年の「Amazing Love」まで、彼らとの絆はずっと続いております。
芸能というのは、人間が作るものである以上、人間同士のコミュニケーションが必須です。どんな業界、会社、組織でもそれは変わらないでしょう。人間同士の密な関係が構築できなければ、良い作品など生まれません。
そうした数々の、才能あるタレントさんを輩出したジャニーさんの功績に対する、尊敬の念は今も変わっていません。
私の人生にとって1番大切なことは、ご縁とご恩です。
ジャニーさんの育てた数多くのタレントさんたちが、戦後の日本でどれだけの人の心を温め、幸せにし、夢を与えてきたか。
私にとっては、すばらしいタレントさんたちやミュージシャンたちとのご縁をいただいて、時代を超えて長く歌い継いでもらえる作品を作れたこと、そのような機会を与えていただいたことに、心から恩義を感じています。
いち個人、いちミュージシャンとして、ジャニーさんへのご恩を忘れないことや、それから、ジャニーさんのプロデューサーとしての才能を認めることと、社会的、倫理的な意味での性加害を容認することとは、全くの別問題だと考えております。
作品に罪はありませんし、タレントさんたちも同様です。
繰り返しますが、私は性加害を擁護しているのではありません。アイドルたちの、芸事に対するひたむきな努力を間近で見てきたものとして、彼らに敬意を持って接したいというだけなのです。
★節C
ですから、正直残念なのは、例えば、すばらしいグループだったSMAPの皆さんが解散することになったり、最近ではキンプリが分裂してしまったり、あんなに才能を感じるユニットがどうして…、と疑問に思います。
私には何もわかりませんけれど、とっても残念です。
願わくば、みんなが仲良く連帯して、すばらしい活動を続けていってほしいと思うのは、私だけではないはずです。キンキ、嵐、他のグループもみんな、末永く活動していってほしいと思うばかりです。
先日、男闘呼組の再結成といううれしいニュースがありましたが、同じようにいつか、近い将来、SMAPや嵐、キンプリの再集合も実現するような日が来ることを、竹内まりや共々に願っております。
性加害に対する、さまざまな告発や報道というのが飛び交う今でも、そして彼らの音楽活動に対する、私のこうした気持ちに変わりはありません。
★節D
私の48年のミュージシャン生活の中で、たくさんの方々からいただいたご恩に報いることができるように、私はあくまでミュージシャンという立場から、タレントさんたちを応援していこうと思っております。
彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが私の本分だと思ってやってまいりました。
ま、このような私の姿勢をですね、忖度あるいは長いものに巻かれていると、そのように解釈されるのであれば、それでも構いません。
きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう。
以上が、今回のことに対する私からのご報告です。長々失礼しました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
※編注:出典『ORICON NEWS』「山下達郎“唯一の発信基地”で7分間の独白 松尾潔氏、ジャニーズ問題、忖度の声に持論【コメントほぼ全文掲載】」(2023年7月9日 15時31分)
引用文はORICON NEWSをほぼそのまま使用させてもらっていますが、山下氏の発言形態(ラジオ番組による口頭)を考慮し、句読点や改行等は適宜カズノで変更しています。「文の意味するところ」が明瞭になるよう句読点を変えて、違う話に変わったところで改行する感じです。「語」を変えたとこはないです。
また、混乱を生みかねない一部の表記も変更しています(例:「私のオフィス・スマイルカンパニー」(ORICONさん原文)→「私のオフィス、スマイルカンパニー」(カズノ版)など、主に記号の使い方による混乱の回避です)。
原文中、意味を取りかねる箇所にも、カズノの判断で注記を入れました。
また文中の「★○○」の文言は、この連載での便宜的な必要から、カズノが入れたものです。原文にも山下氏の発言にもありません。
編集責任:カズノpub./宮崎研治
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