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気絶のメニューからシャンパンが消えたわけ

普段「気絶はコンセプトカフェではない」と言い張っていますが、この記事では話をわかりやすくするために、一応他のコンカフェと横並びの位置にいる、という前提で話を進めさせてもらいますね

えー、コホン

コンセプトカフェに行かない人は驚くかもしれませんが、コンカフェには結構な割合でメニューにシャンパンがあるのです

といってもコンカフェにおいてはスパークリングワインを含めてシャンパンと総称しているケースも多く、店頭価格で4千円程度の物から5万円くらいの高級品までさまざまです

かくいう気絶もオープンしてからしばらくはシャンパンをメニューに並べていました

もちろん売り上げUPに貢献するかなーと思っていたからなのですが、なんかいろいろ考え、ある仮説を立て、その仮説に基づき現在はシャンパンをメニューから外しています(お祝い事の際など、事前に予約してくれれば用意することはあります)

その仮説というのは「シャンパンをメニューからなくした方が売り上げ上がるんじゃね」というものだったんですが、結論からいうと思惑通り売り上げはアップしました
やったー!

もちろんシャンパンをメニューから外したこと以外にも売り上げアップの要因はあるので、シャンパンが直接的に売り上げアップを阻害していたとは断言できませんが、ここではおれの立てた仮説とその検証を通して「シャンパンが商材としておいしくない理由」を説明していきます

ただしこの考え方は、気絶というお店固有の事情が関係しており、すべてのコンセプトカフェに当てはまるものでないことはご理解ください

要点は二つ
❶シャンパンは気絶にとって効率の良い商材じゃない
❷シャンパンの存在がマイナスに働くケースがある

順番に説明していきましょう

❶シャンパンは気絶にとって効率の良い商材じゃない

シャンパンは冷やして飲むお酒です。当然保管には冷蔵庫のスペースを必要とします。また提供にはワインクーラーやシャンパングラスなども必要となり、気絶のように狭いお店では常備するだけでも置き場所に工夫が必要です

仮に1000円で仕入れたシャンパンを4000円で販売するとします。ということはオーダーされた際の儲けは3000円。で、このシャンパンが3日に1度のペースで注文されたとすると3日で3000円の利益を生むことになります。つまり1日1000円の利益です

では1万円で仕入れたシャンパンを5万円で売った場合はどうなるのか。利益は4万円。ただし高価格のシャンパンはオーダーされるペースが頻繁ではないので、ここでは20日に一度売れると仮定します。そうすると1日あたりの利益は2000円

前提として気絶の冷蔵庫は小さいので、1日1000〜2000円しかもたらさないものを常備しておくのはそれだけでかなりキツイ…。シャンパンを冷やしておくだけのスペースがあれば気絶名物の合鴨のパストラミ(美味い)や生ハムクリームチーズ添え(美味しい)が10食分は確保できるので、そっちの方がハイペースで店に利益をもたらしてくれるんですわ。ハッキリ言って

冷蔵庫のスペースに余裕があるならシャンパンをたっくさん冷やしておいてシャンパンによる利益を期待するのもアリでしょうが、狭小店ではその冷蔵庫スペースで高回転・高利益のおつまみメニューを常備した方が効率いいと思うんですわ

…という論を披露すると「キャストが積極的にシャンパンを勧めることで、売るペースを上げたらいいのでは?」という意見があると思います
それについては❷の項で説明します

❷シャンパンの存在がマイナスに働くケースがある

シャンパンはたしかに特別感が演出できるし、仕入れ値に対して売価を高めに設定しやすい商材です。ただしその「特別感」と「高売価」に注意を払わないととんでもない売り上げ損失を招くケースがあると考えています

脇役を作る構造

シャンパンは提供に手間がかかるし、栓を抜くことが一種のエンタメ要素を孕んでいるので、やはり特別感のある商材です。ただここで言う「特別感」は、それを注文したお客さんだけが得られるものなのです

シャンパンのオーダーが入ると、キャストたちはワインクーラーを引っ張り出し氷を入れて、シャンパングラスを机に並べ、代表のキャストがコールと共にシャンパンの栓を抜き、人数分のグラスにシャンパンを注ぎ、グラスを掲げて乾杯の音頭を取り、各々がシャンパンを飲む

この間、まわりのお客さんは基本的に放置されることになります。放置されたお客さんの思考はおよそ次のいずれかになるのではないでしょうか

・自分もお金を払ってシャンパンを入れたい
・自分はシャンパンを入れてないから楽しむチャンスが減った

シャンパンにはオーダーしたお客さんを主役にする力があります。ただしそれはまわりのお客さんを脇役にしてしまうという弊害とセット。これは脇役にしてしまったお客さんたちの来店回数を減らす大きな理由になると考えられます

気絶の場合、シャンパンがもたらす利益と、シャンパンに減らされる来店機会をかなり慎重に検討した結果、これたぶんマイナスになってるわ、という結論に達したわけです

高売価の落とし穴

大事なことをいいますが、コンセプトカフェを訪れるお客さんのほとんどは月一回の給料をやりくりしているのです。当たり前じゃんって思われるかもしれませんが、このことを忘れている経営者は結構いるんじゃないでしょうか

つまりコンカフェに使える予算には毎月おおよその上限があるので、例えば月のコンカフェ予算が1万円の人は、1万円のシャンパンを開けることはできないわけです(シャンパン代だけでお店に居られるわけではないから)

本当にシャンパンを飲みたくて飲んでる人はいいんですが、そうでないお客さんが「お祝いだから」「ねだられたから」という理由でシャンパンをオーダーするというのは、突き詰めるとそのお客さんの月のコンカフェ予算をシャンパンで消費させているってことなのです

シャンパンは高売価商品なので、オーダーが入れば当然その日の売り上げは跳ね上がります。しかし月のコンカフェ予算が決まっているお客さんからしてみたらそれは単に「数回に分けて使うはずだった予算をシャンパンに注ぎ込んだ」というだけのことなのです

つまりシャンパンがもたらしてくれるのは日間ベースの瞬間的な売り上げであり、月間ベース・年間ベースの中長期的な売り上げにはほぼ寄与しないというのがおれが立てた仮説でした



ここまで読んでいただけばお気づきかもしれませんが、気絶がメニューからシャンパンを消したのは「シャンパンは勧めませんよ」という意思表明なんですよ

「高い商材勧めたりしないから気軽に安心してふらっと毎日遊びにきてね!」というメッセージをお客さんに送っているわけです

今のところ自分のこの戦略は功を奏しているように感じています。気絶に来てくださるいわゆる常連さんはこのメッセージを敏感に感じ取ってくれている実感があるんだよなぁ。ここについてはなかなか根拠が示せないんですが

もちろんコンカフェの楽しみ方は人それぞれ。どういうお客さんをメインターゲットに据えるか、というのは個店ごとの戦略なので、非日常を求めてお店のドアを叩く人にとってはシャンパンが効率よく作用するケースもあるはずです。どっちがいい悪いという話ではないってことですね

ま、そんなこと言っときながら半年後には気絶メイドたちが高額シャンパンをガンガンお勧めしまくってるかもしれませんが…


2020/09/24追記
キヨさんから当noteに対して引用意見をいただきました


https://note.com/sotokanda3/n/naa98a05e71b6

気絶のnoteに反応してくださってありがとうございます!
反論ってほどではないんですが、キヨさんのnoteを受けて自分のnoteの内容を少し補強させてください

●そもそもシャンパンを飲みたいと思ってるキャストはそんなに多くないはず

高額バックが付くケースが多いので「うれしい」と感じていても、できたら飲みたくないと思っているキャストは少なくないんじゃないでしょうか

シャンパンって度数高いし、炭酸入ってるし、味も個性的で言ってしまえばクセ強めのものが多い
特に一日に何本も開けるケースではかなりしんどいのではないかと

お客さんが自分好みのシャンパンを開けてくれればまだいいんだけど、なかなか「このシャンパンよりこっちのシャンパンがいいです」とは言えないですよね

●まわりのお客さんとシャンパンをシェアする行為は、主役と脇役の関係性をさらに加速させる

これは自分の体験談なのですが、ある混雑しているコンセプトカフェで某企業の社長さんと相席をしたことがありました
その社長さんがそれなりにお高いシャンパンを開けて「ご一緒にどうぞ」とそれを飲ませてくれたことがあるんですね

自分はそのシャンパンは好きではなかったんですが、相席している人が善意で勧めてくれた物だし、そのお店のメイドさんも我々の席に大集合していたので「あ、ありがとうございます」と言ってグラスを手にとっていっしょに乾杯したわけですが、内心は飲みたくないシャンパン渡されてお礼を言っている状況がまぁまぁ苦痛でした
なんで自分のお金で遊んでる自分が太鼓持ちみたいなことをしないといけないんだろうと…

実はその店にはその一件以来足が遠のいてしまいました。このnoteを書く直接的なきっかけになった出来事でもあります

つまり何が言いたいかというと、周りの人とシャンパンをシェアする行為は必ずしも主役・脇役の関係性を薄めるものではなく、場合によっては主役・脇役の関係性を決定づけてしまう場合もあるよ、ということです

とは言えキヨさんの意見は非常に興味深かったです
そもそもお客さんの側に
「主役になりたい」
「キャストを喜ばせてあげたい」
という視点があることを思い出させてもらった気がします

いいきっかけを与えてくれてありがとうございました!



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