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マグマ1 地表へ

マグマは地底深くの闇に眠っていた。

随分と多くのときをそこで過ごしていた。

マグマの姿は、長い胴体を持った龍のようで、皮膚はドロドロとしていて赤黒かった。

顔のまわりは鱗に覆われ、手足は短く、指と爪は丸かった。

地表が春を迎えると、マグマはうねって地中を這いずり回った。

それはまるで、地表へ飛び出るときを待ち侘びて舞っているようだった。

あるときマグマは地表へと続く道を見つけた。

そこからは地表の様子がよく見えた。

何億年もの間そこから地表を眺めた。

そのうちマグマは、ときたま地表付近を彷徨うようになった。

近づくほどにマグマの赤黒くドロドロした皮膚は膨れ上がった。

自然の摂理かそのときは来た。

その日は暖かかった。

地表に出たマグマは青い炎に変わって、とあるところへ忍び込んだ。

そこは、人間の体内だった。

その年は桜の咲くのが早く、そして散るのも早かった。

その、桜の咲いている儚い間の出来事だった。

その人間は若い女性だった。

女性は美しく華やかな世界にいた。

女性の周りにいる人たちは優しかった。

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