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    マグマの物語

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ダマラのおはなし

そこは深い深い谷の底だった。 ダマラはかれこれ50000年ほどそこにいた。 はるか上空から岩を伝って水が滴り、丸い谷底の中央には湖が浮かんでいた。 この湖の水量は日…

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2か月前
1

マグマ4 静寂 -終わり-

マグマ。 地表に出て仕舞えば、草木花を焼き尽くす。 そして固まって、今度こそ醜い岩となり、石となり、灰となる。 地へ出たマグマは二度とあの美しいうねりを取り戻す…

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6時間前

マグマ3 夢

田園風景を過ぎてゆく。 天気の良い日だった。 さくらの木のもとで一人腰かけながら夢に落ちていく。 ゴーン、ゴーン、ゴーン 頭の中で鐘が鳴った。宴が、地底で宴が始…

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2日前

マグマ2 洞窟へ

女性は笑顔で振る舞った。 しかし、太陽が地球を半周もすると女性の体から黒い煙のようなものが出ていることに気がついて、一度あの場所へ戻ろうと考えた。 日は登ってい…

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5日前
1

マグマ1 地表へ

マグマは地底深くの闇に眠っていた。 随分と多くのときをそこで過ごしていた。 マグマの姿は、長い胴体を持った龍のようで、皮膚はドロドロとしていて赤黒かった。 顔の…

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7日前
1

あるはるのひにさくらのきのしたで

みたことのないとりをたくさんみかけたひ かんじたことのないあるいはわすれていたかんじょうをおもいだしたひ さくらのはなびらがおちてくるのをたくさんみかけたひ し…

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12日前

心の声にしたがえば

心の声に従えば わたしはここにいないのでしょうか 心の声に従えば 見返りのない愛を あなたに渡せるでしょうか

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3週間前
2

ある日

見たことのない鳥をたくさん見かけた日 感じたことのない あるいは忘れていた感情を思い出した日 桜の花びらが地面に落ちてゆくのをたくさん見かけた日 島全体が靄につ…

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4週間前

永いワルツ

目を背けた 美しさに生えた棘から (光があれば影がある) 残り香が気になってしまって 痛みを甘受した (それこそわたしが経験したかったもの) あなたの影をよく知っ…

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4週間前
3

禁じられたひと

階段の下からあなたのかもしれない笑い声が聞こえてくる。 あなたのかどうかはむしろ問題じゃないの。 降りて行こうかなんて、何十回か迷ったの。 着替えて、唇を赤くし…

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2か月前
1

ほたる 

ー湖のほとりでー あおばおつ なつの夕ぐれ コトノハがつむぎだされてみなもはゆれた コトノハはほたるのおからうみいでた よるがおいこしみなもはてった しゅうえん…

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4か月前
1

砂漠

ある朝に落とされたのは砂漠だった  吹く砂に身を強張らせたら  風がいう ここにも道が見えるかと 進めば道は砂で消えてく 月の夜に またも2人は巡り合う 永い孤…

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4か月前
1

青い恋人は今はグレー

青いひと reborn ver. 月沈み心は浮いた 拒んだの あなたのくれた愛でさえもを 自由には狭すぎる島 夢叶う それは運命が鍵を握って 道標だったあなたは消えていた …

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4か月前
1

地獄の門から

地獄への門をくぐりし君はそう 意見を持たぬ日和見者だ 美しいものに溺れて 溜め込んで浪費したのは狂った異端児 下を見て奢り見上げて妬むのは比較するから 苦しくな…

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5か月前
2

ダマラのおはなし

そこは深い深い谷の底だった。

ダマラはかれこれ50000年ほどそこにいた。

はるか上空から岩を伝って水が滴り、丸い谷底の中央には湖が浮かんでいた。

この湖の水量は日によって増減を繰り返し、それにはいくつかの周期があることにダマラは気づいていた。

数千年に一度くらいは、ダマラの寝床である洞窟は水で満たされた。

そんなときには井戸のようなこの谷地を登っていって、普段は行き着くことのできない上

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マグマ4 静寂 -終わり-

マグマ4 静寂 -終わり-

マグマ。

地表に出て仕舞えば、草木花を焼き尽くす。

そして固まって、今度こそ醜い岩となり、石となり、灰となる。

地へ出たマグマは二度とあの美しいうねりを取り戻すことはない。

ただ、ことわりだった。

山に潜む岩石も、山を転げて水辺に流れついた石ころもマグマだ。

世界はマグマで満ちている。

ときおりマグマは吹き上がり、大地は何度でも蘇る。

夢から覚める。

女性は湖を見ていた。

女性

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マグマ3 夢

マグマ3 夢

田園風景を過ぎてゆく。

天気の良い日だった。

さくらの木のもとで一人腰かけながら夢に落ちていく。

ゴーン、ゴーン、ゴーン

頭の中で鐘が鳴った。宴が、地底で宴が始まる合図だ。

眠りから覚めた。

そこは小さな部屋だった。

女性はベッドから起き上がって立ち尽くした。

女性はもう一度、長い長い眠りについた。

夢に落ちてゆく。

マグマは1人洞窟に篭ってせっせと身を整えている。

静寂さは

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マグマ2 洞窟へ

マグマ2 洞窟へ

女性は笑顔で振る舞った。

しかし、太陽が地球を半周もすると女性の体から黒い煙のようなものが出ていることに気がついて、一度あの場所へ戻ろうと考えた。

日は登っている。

胸の辺りがざわつくのを感じつつ、マグマにその匂いの染みついた場所を目指した。

そこへ戻ったら、もうこの華やかな場所へは戻ってこられない気がした。

地底への入り口はもう使われていない古い井戸だった。

マグマは非力で柔い人間と

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マグマ1 地表へ

マグマ1 地表へ

マグマは地底深くの闇に眠っていた。

随分と多くのときをそこで過ごしていた。

マグマの姿は、長い胴体を持った龍のようで、皮膚はドロドロとしていて赤黒かった。

顔のまわりは鱗に覆われ、手足は短く、指と爪は丸かった。

地表が春を迎えると、マグマはうねって地中を這いずり回った。

それはまるで、地表へ飛び出るときを待ち侘びて舞っているようだった。

あるときマグマは地表へと続く道を見つけた。

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あるはるのひにさくらのきのしたで

あるはるのひにさくらのきのしたで

みたことのないとりをたくさんみかけたひ

かんじたことのないあるいはわすれていたかんじょうをおもいだしたひ

さくらのはなびらがおちてくるのをたくさんみかけたひ

しまぜんたいがもやにつつまれていたひ

うすみずいろのそらにうすぴんくのくもがこっそりかさねられたゆうぐれ

みずからちかづいていくばかりだったねこがけいかいをすこしといてすこしちかづいてきた

もういちどまっすぐになりたいとおもった

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心の声にしたがえば

心の声に従えば

わたしはここにいないのでしょうか

心の声に従えば

見返りのない愛を あなたに渡せるでしょうか

ある日

ある日

見たことのない鳥をたくさん見かけた日

感じたことのない あるいは忘れていた感情を思い出した日

桜の花びらが地面に落ちてゆくのをたくさん見かけた日

島全体が靄につつまれていた日

薄水色の空に薄ピンクの雲がこっそり重ねられていた夕暮れ

お気に入りの場所に腰掛けていたら 自ら近づいてばかりだった猫が 少し近づいてきた

もう一度まっすぐになりたいと心から思えた日

なれるんだと思う 私のまっす

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永いワルツ

永いワルツ

目を背けた

美しさに生えた棘から

(光があれば影がある)

残り香が気になってしまって

痛みを甘受した

(それこそわたしが経験したかったもの)

あなたの影をよく知っていた

あなたの光は相変わらずとても魅力的

(それでこそ光)

“しっかり手を握って” だなんて

お互い柄じゃないので

ワルツを踊ろう

禁じられたひと

階段の下からあなたのかもしれない笑い声が聞こえてくる。

あなたのかどうかはむしろ問題じゃないの。

降りて行こうかなんて、何十回か迷ったの。

着替えて、唇を赤くして、

一人で歌ってる。

そういうのが私の愛なの、結局見せたりもしないで。

伝えることはあとまわし、その間にあなたが去っていったとしても。

それでいいの、あなたを汚すくらいなら。

そうじゃないよ、そうじゃないよ。

僕らは生き

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ほたる 

ー湖のほとりでー

あおばおつ なつの夕ぐれ

コトノハがつむぎだされてみなもはゆれた

コトノハはほたるのおからうみいでた

よるがおいこしみなもはてった

しゅうえんに水と空気はこっそりとまたはじまりをこしらえていた

においたつふしぎなあさにたいようがいろをおしえるはるの日のこと

砂漠

ある朝に落とされたのは砂漠だった 

吹く砂に身を強張らせたら 

風がいう ここにも道が見えるかと

進めば道は砂で消えてく

月の夜に またも2人は巡り合う 永い孤独は終わりを告げる

無音のログ 近くて遠い 離れれば 恋焦がれたわ 狂おしいほど

貝のよう 触れればかたく閉ざされた 止めた話をどうか続けて

溶けあった そしてほどけた 塞がらぬ傷口が今溶け合ってゆく

恋したら実りの季節 少

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青い恋人は今はグレー

青いひと reborn ver.

月沈み心は浮いた 拒んだの あなたのくれた愛でさえもを

自由には狭すぎる島 夢叶う それは運命が鍵を握って

道標だったあなたは消えていた 光をなくし我は彷徨う

地獄の門から

地獄の門から

地獄への門をくぐりし君はそう 意見を持たぬ日和見者だ

美しいものに溺れて 溜め込んで浪費したのは狂った異端児

下を見て奢り見上げて妬むのは比較するから 苦しくなった

凍りつく心を守る二枚舌 天国のドアを探し求める

貪欲は節制のなき愛という 色に侵され怠惰に溺れ 

手放しをはじめたときはもう遅い 気づいてほしい心の声を

巡礼は外に向かった ぶつかって内へ向かった 自分への旅

本当を贈り

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