『タイガースマイル』ラムネ炭酸寝顔(トラネキサム酸笑顔・番外編)#毎週ショートショートnote
お題は【トラネキサム酸笑顔】。裏お題は【ラムネ炭酸寝顔】・・・
*文字数過多なので番外編として参加させていただきます。😊
*虎根の職場にて
虎根樹早夢(トラネ キサム)さんの笑顔は特筆すべきだと思う。
同じ保険の営業としての先輩で、その厳つい顔に似合わず
お客様の心を開いて、その成績もトップクラスなのだが
最近どこか元気がない。
《タイガースマイル》とまで称えられる虎根さんの魔法の笑顔に
覇気が感じられないのである。
不思議に思って居酒屋に誘ってそれとなく聞いてみた。
☆☆☆
「最近、俺が引っ越したのは知ってるだろ? 実は・・・
隣の部屋に挨拶に伺ったんだけど、若い女性で・・・
挨拶の品と名刺を渡したんだが、その途端に俯いて
小刻みに震えだしたんだ?!」
「・・・それはまた いきなりでしたね?
確かに虎根さんのお顔は厳ついですが、怯えるほどでは?」
「その言い方もどうかと思うけど・・・
営業スマイルには、ある程度自信もあったのに
俺の方がショックを受けてしまった。」
「・・・なるほどね。その女性に嫌われてしまったんですね?
そんなことが原因でしたか。」
「隣同士なのに この先、あの女性にどう接していいのか・・・?!」
結局、大した助言もアイデアも浮かばないままにその場は別れたが
数日後に、変身したかのように元気になった虎根さんから《ラムネ》を
手渡されて、本人も豪快にラムネを飲み干した後、仕事中なのに・・・
「ちょっとだけ休憩するから!」と言って、傍のソファーに横になった。
☆☆☆
・・・いきなり軽い寝息を立てている虎根さんの顔は厳ついままに
ラムネ炭酸の余韻を残したまま・・・幸せそうな笑顔で夢世界に。
何かがあって、隣の女性との問題がクリアになったのだと思った。
(・・・良かったですね。虎根さん!)
☆☆☆☆☆
*数刻前
午後出勤の明日香は、坂道の上にある職場の薬局に向かって
歩いていた。慣れた道ながら少し急過ぎる坂道・・・
「・・・?!」
坂道の上の方から車椅子のご老人が向かって来たのだ。
介助人らしき人は後方から走って追ってきている?
ご老人の車椅子はブレーキに手を伸ばす余裕も失ったまま
疾走する加速度を増している?!
( どうしよう? 私が止めるしかない?! でも・・・
無理な気もするし?!!)
無謀な勇気を出して車椅子の前に出ようとした明日香の前に
突然、黒い影が飛び込んできて車椅子の前に立った!!
ガシィイイイイイーーーーーー・・・・・・…!!!
鬼人のようなオーラを放つ黒い影の男はそのまま両手をかざして
車椅子を受け止めた!! 後退りながらも停止させた!!!
☆☆☆
明日香の動悸が収まった頃に・・・
あわやの大事故を免れたご老人も、後から走ってきた介助人も
ひたすら黒い影の男に感謝していた・・・
黒い影の男には見覚えがあった。
トラネキサム酸・・・否!
虎根樹早夢さん!?!
☆☆☆☆☆
ご老人のいる施設に持ち帰る為に大量に買い込んだ《ラムネ》の重さが
介助人が一瞬手を放してしまった原因になったようだった。
ひたすらお詫びと感謝を繰り返す介助人とご老人に、虎根は満面の笑顔で
「大事に至らなかったことが何よりです!!」と返した。
せめてものお礼にと、レジ袋に入れた20本くらいの《ラムネ》を受け取った
虎根と明日香の目が合った・・・
虎根は袋から5本ほどのラムネを取り出し、自分のスーツのポケットに押し込むと袋ごと明日香に差し出した。
「ビックリさせてしまいましたね。申し訳ありません!!」
明日香は、そう言った虎根樹早夢さんの笑顔に・・・
まるで長い間トラネキサム酸に侵されていた自分の心が
瓦解したように溶けるのを感じていた。
だから思いっきりの笑顔で返したのだ・・・
「これからもよろしくお願いします!!」
明日香の言葉と笑顔に
虎根樹早夢の《タイガースマイル》が弾けた☆
【了】
(1635字)
*隣人関係に幸あれ!(笑)
このお話はフィクションです。 一切の事実とは関係していません。
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