囲碁の一力遼八段が7大タイトル初獲得した件について

いつもは将棋の話ばかりですが、今回は囲碁です(といっても将棋の話も少し触れます)。

先日、囲碁の7大タイトルの1つである碁聖を、一力遼八段(23)が獲得した。初の7大タイトルである。

一力は他の天才棋士同様、中学生(13歳)でプロ棋士となる。若手棋戦では早くから活躍していたが、7大タイトルはなかなか手が届かず、今回が6回目(*)の挑戦でようやく獲得となった。本人もほっとしているだろう。

これまでの5回の挑戦は、全て井山裕太棋聖(31)相手だった。井山が全冠制覇していたときにも挑戦している。

天元戦(2016) 井山六冠 VS 一力七段 (1勝3敗)
王座戦(2017) 井山七冠 VS 一力八段 (0勝3敗)
天元戦(2017) 井山七冠 VS 一力八段 (0勝3敗)
棋聖戦(2018) 井山七冠 VS 一力八段 (0勝4敗)
王座戦(2018) 井山五冠 VS 一力八段 (2勝3敗)

直近の王座戦はフルセットまで戦ったが、トータルスコアでは一力の惨敗である。井山は7大タイトル全冠を2度達成し国民栄誉賞を受賞したとんでもない存在であり、一力にとっては現在も巨大な壁である。数年前、日本の囲碁界の実力No.1はもちろん井山、そしてNo.2は一力と目されていたと思うが、No.1との差はあまりにも大きかった。

今回の碁聖戦で戦ったのは、かつて16年前に囲碁界の挑戦に登りつめた羽根直樹碁聖(44)である。一力は羽根から3勝ストレートでタイトル奪取したが、碁の内容としてはどれも接戦であり、羽根はかつてのトップとしての貫禄を見せたと思うが、それでも今の一力の敵ではなかったということだろう。

また、一力は兼業が新聞記者という珍しい経歴の持ち主である。最近は将棋の谷合広紀新四段が棋士と東大の研究者、また先日NHK杯戦にも出場した星野良生五段はゲーム会社に就職するなど棋士の兼業は増えているが、一力の場合は少し状況が違う。これは一力が東北の河北新報という新聞社の社長の息子で、その河北新報社に入社した為である。

あくまで私の想像でしかないが、囲碁や将棋の棋士になる人は経済的には平均よりは上の家庭で育っている人が多いのではと思う。フィギュアスケートほどはお金はかからないだろうが、それでもなんだかんだお金は必要だろう。その中でも、一力のような御曹司が棋士になったのは私の知る限り初めてだと思う。

というわけで異色な存在である一力遼・新碁聖であるが、さきほど数年前は囲碁界No.2と書いたが今は違う。今の囲碁界No.2は、10代で史上最年少名人を獲得した芝野虎丸名人(20)であり、一力は上にも下にも巨大な壁が存在している。記者会見では「このタイトル獲得がスタートだと思うので、これから一局一局丁寧に戦って、他のタイトルもこの勢いで獲って行きたい」と語っており、打倒井山、打倒芝野を見据えている。是非頑張ってほしい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/naitoyukiko/20200815-00193353/


(*) "6回目" にはジンクスめいたものがあり、過去、山城宏九段(62)は過去6回挑戦したが残念なことに7大タイトル獲得出来ていない。将棋でも森下卓九段(54)が同様に6回挑戦したがタイトル獲得できなかった。なお将棋の木村一基王位(47)は7回目の挑戦でようやく初タイトルを獲得している。

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