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XGはグローバリズムの先を行っているかもしれない

XGというグループが日本人の一部にしか届いていないのは嘆かわしいことだと思う。日本のグループなのに。

もともと「めちゃスゲ〜〜〜〜」と思っていたが、今日アップされた動画で「従来のコンテンツより先に行っている」という認識が確かになってきた。

この動画ではメンバーが先日リリースされた新曲「GRL GVNG」という曲をASLで踊って(というか歌って)いる

ASLというのは(American Sign Language)の略で要するにアメリカで用いられている手話である。

俺は洋楽には疎い方であるし、K-POPもにわかもいいところなのだが、こんな試みは初めて見たし、なかなか食らってしまった。

XGをわからない人にかいつまんで説明すると、avexが韓国のプロデューサーと組んで作ったガールズグループで、メンバーは全員日本人、楽曲は英語でHIPHOPだが活動拠点は韓国である。カルフォルニアロール(プルコギキンパ風)みたいな感じだが、メンバーがみんな3ヶ国語をベラベラ喋ってるのでなんだか納得してしまう。
デビューは去年。

ラップ、ダンス、歌唱どれも高品質、メンバーが3ヶ国語を入り混ぜてラップした「GALZ ZYPHER」がバズり、今はアジア人レーベル「88rising」にも加入し、英語圏でもライブを行なっている。

新曲の「GRL GVNG」はcyber punkにドリルを融合させたコンセプトでバチバチにやっているわけだが、今回はその手話バージョンが公開されたわけである。

関係ないけど「ぎゃる⭐︎がん」ってゲームあったな



これがASL話者にとってどのように受け取られるかはわからないが、とてもいい試みだと思う。
試しに音を消して動画を見てほしい。しっかりとリズムが伝わってこないだろうか?
無音でダンス動画を見てもある程度わかる部分はあるが、手話になるとメロディーの符割りやダイナミクスが視覚に届いてきて面白い。
そして何より「手話がカッコいい」という感動を覚えた。しっかりとダンスとしても成り立っているし、表現方法の一つとしてより広まってほしい。これが「歌って踊る」の一つの完成形なのではとぼんやり思っている。

そもそも「今度の曲、手話でやってみましょうか」と言う作り手側もヤバいし、サラッとできちゃうXGもヤバい。今これができるのは世界でXGだけなんじゃないか。

ここから話は肥大化の一途を辿るが、まだ寝ないでほしい。

そもそも音楽でも映画でも本でも、あらゆるプロダクトはどこかの地域に根付いて制作され、それが異文化圏に拡散されるとなった時に翻訳されていくものである。全てのプロダクトにはフッドがあるのだ。どんな作家でも目ん玉は多くて二つしかついていないし、脳みそは一つしかない。いくら本を読んで知識を広げたとしても、異文化に興味の眼差しを向けることと、経験としてコツコツと内面化されていくとでは訳が違う。

その点XGにはフッドがないように見える
去年リリースされた「MASCARA」という楽曲を例にとろう。

曲構成は近年のK-POPによくみる感じで、フックに特徴的なフレーズを持ってきている。テーマとしてもBLACK PINKや(G)I-DLEにも通ずるガールクラッシュとフレックスが垣間見える。

ここで面白いのは曲全体として60年代アメリカのヒットソング「涙のバースデイ・パーティ」をサンプリングしているところだ。(詳しくはこのツイートミテ)

サウンドの細部を見ると、やはりどこよりもアメリカに目線が向いていると感じざるを得ない、(Cパートとかまんまちょい昔の洋楽っぽいし)XGはアイドルというより「DIVAの集合体」なのかもしれない。

それでいてちゃっかり日本語が入っていたり、ギラつき方とかも全盛期のavexっぽいし……

曲は変わるが「SHOOTINGA STAR」はギャルで

新曲「GRL GVNG」はサイバーパンクと日本にルーツのあるカルチャーを土台にしている
(Y2K→Y3Kという流れも美しい)

というロコモコ丼(コチュジャン仕立て)を地で行っているわけで、フッドとか言っている場合ではない。

日本語、英語、韓国語、そして手話、HIPHOP、サイバーパンク、ヨジャアイドルでありディーバでもある………

XGは自らのコンテンツを翻訳するのではなく、多様な国のカルチャーを吸収して育っており、そらを確かな実力で発信している。これは従来のグローバルコンテンツが一つの地域から翻訳を介して他方へ「拡散」していたのに対し、多くのカルチャーが一つに「集約」している新たなモデルである。これって凄くないですか!!!!!!!

そんなこんなで最高なので聴いてください。

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