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砂絵 #12_20-21

「夕べ、プールに若い子が流れ着いてね。歳格好もわたしと同じくらい。似たような痣が胸にあった。何となく自分を見てるみたい。その子が夢にでて、何か言いたげだった。死んだこと、納得できないと。今まで、こんな夢見たことなかった」
 須恵の表情が、一瞬強ばった。
「どうかした?」
 何もなかったように、須恵は卓袱台に夕食を並べる。一瞬、須恵の手が滑り汁椀がこぼれる。それを、須恵は茫然と眺めている。
「どうしたの、ぼうっとして。私がやるから」台拭きで流れ出した汁を、椎衣は拭き始める。
 玄関で、須恵は夜食を椎衣に手渡す。何か言いたげだ。
「どうかした?仕事のこと?無理して探さなくても」椎衣は須恵が唇を読めるよう、大きく口を開く。
 首を横に振り、須恵は椎衣の手を握る。握られた手を、椎衣は鬱陶しそうに解く。須恵は椎衣に紙切れを手渡す。 
「何?」椎衣は紙切れをを読む。そこには、妹と大きな字。椎衣は怪訝そうに須恵を見る。須恵の目は赤く充血している。 
「なんのこと?。行くから」