![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72743967/rectangle_large_type_2_50a16158d6eb1574dd1791c513ac161f.jpg?width=1200)
仮想遊園地 #73_89
⌘三十二 給油所
貨物車のライトに給油所の看板が照らされる。自転車を道端に止め、椎衣は給油所に向かって歩きだす。給油機の影に隠れ椎衣は中を窺う。三人目の少年が貨物車の横に立ち何かを話している。運転席にいる人物の顔は見えない。
「今日は何体だ?」
「さっき三つ目やってたけど」
「その前の二つは?」
「さあ?知らせてこいって言われただけ」
「自分で確かめろ」
車のドアが急に開く。ドアに当たり少年は地面に倒れる。
「なにすんだよ!」
「行けよ!」車から降りてきた男が少年の脇腹を蹴りあげる。男は屈み込むと少年の胸ぐらを掴む。その時、男の横顔をライトが照らす。太気を見て椎衣は口を抑える。
二人給油所の裏手に回る。貯蔵タンク。鉄製の丸蓋が並ぶ貯蔵タンク。少年は一つの蓋の前で屈み込む。おもむろに蓋を開け中を覗きこむ。
「ないね」少年の声がタンクの中でくぐもって響く。
「そうだろうぜ」太気は少年の背中に足を蹴おろす。