砂絵 #70_85
椎衣はハンドルを握り締めたまま、ゆっくり自転車を降りる。やにわに椎衣はハンドルを掴んだまま、自転車の車体を振り回す。一人目に自転車の後輪が当たり、鈍い音を立てる。二人目にも椎衣は自転車を振り回す。二人がひるむ隙に椎衣は自転車に跨る。一人目が飛びかかる前、椎衣はペダルを強く漕ぎだす。
「追いかけろ!」一人目が叫ぶ。
椎衣は後ろを振り返る。少年達二人が態勢を立て直し追いかけてくる。椎衣の自転車は海岸道から逸れ街に入る。
街路、夜。人影もない街路、椎衣の自転車が飛び去っていく。二人は椎衣に距離を詰め始めている。
前方に自動車整備工場の廃車置場。椎衣はその中に自転車を進める。自転車を倒し、椎衣は廃車の裏に体を伏せる。二人の自転車が近づいてくる。
「出てこい!もう、逃げられないぜ」