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砂絵 #56_73

「お腹空いてる?」須恵は鞄から乾燥芋を取出し恵に渡す。恵は乾燥芋を鼻先に持っていくと不思議そうに眺める。 
「食べたことなかったの?ばあちゃん作ったから、おいしいよ」
 恵は頷くと乾燥芋をほおばり始める。
「恵が食べ終えたら、早く離れよう」 
「どういうこと?」
「見たんだ。店にきた連中。人を殺した。若い娘だった」須恵は自分の耳に声が届くよう、いつの間にか大声になっている。 
「人殺し?」恵が驚いて椎衣を見上げる。椎衣は恵の頭に手を置く。
「ああ」
「朱雨の死と何か関係が・・・」
 椎衣のイメージ。処理場に浮かぶ朱雨の姿。朱雨は助けを求めるように手を伸ばす。
 椎衣は身を屈め恵を抱き抱える。恵は椎衣の顔を不安げに見つめる。 
「お腹いっぱいになった?」