砂絵 #15_25-26
「君の声に反応して、視界が自動的に切り替わった。右を向けば、観覧車が見えるはず」
砂絵は、首を右に振る。ジェットコースターから観覧車に至る風景が、視界にゆっくり流れる。
「ジェットコースターの隣にメリーゴーランド。遠くに舟形をした建物」
「ゆっくり左の方を見て」
砂絵は、ぎこちなく首を横に振る。
「白いドーム、その向こうに動物園・・・」砂絵は首を左右に振る。
「どうかした?」
「いえ、ちょっと・・・。人の姿がないって遊園地って、寂しいと」
「うん。ジェットコースターに乗ってみる?」
「ええ」
「座席の前、バーがあるだろう?それをグローブで握って」
砂絵の影の手がバーを握る。ジェットコースターは車体を震わせゆっくりと軌道を上り始める。そして、上りきると速度を増して下りきる。砂絵の視界は左右に千切れ、飛び去っていく。
「本物のよう・・・。身体が傾いてる」
「錯視が、そう感じさせる」
「錯視・・・」
砂絵が左手の影をバーから離すと、ジェットコースターはゆっくりと停止する。砂絵は視線を観覧車に移し、周りを見おろす。熱帯樹林園の円形ドームに視線を落とす。
「温室の硝子が光ってる。入ってみます。面白い場所、教えます」