砂絵 #58_75
⁂二十五 破り捨てた写真
庭先で、砂絵は破り捨てた写真を焼いている。どこかすがすがしい気持ちになっていることが、自分でも不思議だ。忘れていいことをいつまでも懐かしんでいても、仕方がないことなのだと。
庭に深い穴を掘ると、砂絵は写真の燃えかすを掃き入れる。そこで黒い烏が卵を温めているかのように想像する。黒い燃えかすの中で烏が巣籠もりでもするわけはない。馬鹿げた想像に砂絵は口元を緩める。
足元に置いたカメラを、砂絵はその烏の巣の上にそっと置く。黒く鈍く光るカメラ。巣籠もりでもするように、その身を落ち着かせている。砂絵は埋葬をするように、やにわに穴に土をかぶせる。