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砂絵 #66_83

 椎衣は鉄パイプを振り上げる。ユウのナイフを掴んだ右手に躊躇なく振り降ろす。ユウは叫び声を上げナイフを離す。体をねじ曲げ椎衣を睨む。仰向けになったユウの喉元。そこに、椎衣は鉄パイプの先を押し付ける。 
「痛いよ」ユウは甘えたように呟く。 
 椎衣はユウの喉元から鉄パイプをずらす。ユウは左手でパイプを掴むと、杖代わりにして勢いよく起き上がる。ナイフを拾い上げると、それを椎衣に向かって突き立てる。椎衣がとっさに身をかわすと、ユウのナイフが椎衣の脇腹をかすめる。椎衣は鉄パイプを掴むと、ユウの右肩に振り降ろす。ユウは低く唸るとその場に倒れる。
「騙されないから」息を弾ませる椎衣。
 ユウは唸ったまま右肩を押さえる。 
「さあ、話しなさい」 
「あんた、かあちゃんみたいだ」ユウは眩しそうに椎衣を見る。ユウの頬に涙が伝う。