砂絵 #59_75-76
⌘二十六 生前給付特典
椎衣は窓の隅から喫茶店の中を覗き込んでいる。カウンターでカップを磨く久下の姿が見える。客の声は聞こえてこない。
椎衣はおずおずと店に入ると奥の席に目をやる。
「忘れ物かい?」
「いえ・・・」
「須恵さんたちは?」
「先に行きました」
「何か、あったのかね?」
「そこにいた二人?」椎衣は奥の席に目をやる。
「ケイとユウ?」久下も奥の席に目を向ける。
「知りあいですか?」
「この辺の悪ガキさ。こんなもの置いていった」久下は一枚のチラシをカウンターに滑らせる。そこには『生前給付特典、云々』と書かれている。
「これは・・・」