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蜜柑玉簪「紅」

蜻蛉玉(とんぼだま)は硝子を溶かして作る。それは火との格闘で、始める前に心の準備がいる。火を付けたら仕上がるまで止めるわけにいかないので、気持ちが乗った時にしかバーナーに向かわない。上手くいくとき、そうでないときもあり、特に選ばれた玉が簪(かんざし)となる。簪は挿す本人には見えないから、どの面も見映えすることを心がけている。そして玉が出来たら、その穴に合わせ木を削る。自分にとっては、玉を作るのも木を削るのもけっこう大変な作業だ。

出来上がった簪を撮影するのは楽しい時間。いろんな布の上に乗せてみて、ふさわしいと思う置き場を選ぶ。この紅の玉は藍染めの上と決めた。唐松文様の放射状の白線と、紅玉に入れた筋の対比も気持ち良い。満足のいく写真が撮れると、制作時の苦労が薄まる。そして、またバーナーに向かってみてもいいかなと思う。もう20年以上こんなことを続けている。たぶんこれからも。

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