治るって、なんだろう。
何度か相談をもらったことがあります。
最近、精神的な病気に関する診断を受けました。この不安な気持ちがなくなることはあるでしょうか。
もちろん自分は医療的な資格を持っていないので、専門的な立場には立てません。そういう相談をもらったときには、基本的には肯定も否定もせず、ドライかもしれませんが、ある一定の線を引きながら話を聞きます。
相談をもらうたびに、自分が体調を崩したときのことを思い出します。そして、思うのです。
あの頃の自分といまの自分は、なにが違うのだろう。
もちろんよく食べてよく寝てたまに運動して、やりがいのある仕事と信頼できる仲間がいることは、大きく異なります。
でも本質的には、たいした違いがないのではないかと思ってしまうのです。
いまでも月に数日は寝れない日があったり雨の日には少しだけ気分がどんよりしたりします。不安みたいなものがすっきりなくなったかといえば、全然そんなことはありません。
病気や症状には区別する名前があり、該当した人には伝えられます。ただそれが伝えられたかどうかによって、人の本質的な部分は少しも変化しないと思うのです。
健康な人だって眠れない日はある。昨日までとても元気な人の気分が突然落ち込むこともある。気分の波や落ち込む確率、不調の長さの差異はもちろんありますが、それらによってその人全部が決まってしまうことは断じてないのです。
治るって、なんなんだろうな。
病院に行って完治の連絡をもらえれば、医学的には完治になります。安心はできます。だからといって不調を経験しなかった自分に戻れるわけではないのです。
いつだって、だれだって、体も心も変わり続けています。病気になったり怪我をしたり、元気になったり不調になったり。いつでもだれでも、本当に様々なことが起きてしまいます。
自分についても、いつまた体調を崩してしまうかもしれない不安を、まったく持たないわけではありません。自分の片隅に、不安はいつもあります。
きっとその不安はこれからもまるっと消えることはないのですが、それはそんなものだと受け止めるようにしています。そんな自分も自分であり、どこまでいってもどう変化しても、自分でしかないのだと、割り切っています。
相談に対する答えは、そのたびに変わってしまっているかもしれません。内容の正しさといったものよりもそのときの自分の言葉で話すことを大切にしているからです。
いま目の前にいる人の気持ちと自分の気持ちが重なる部分が、その場における言葉になります。
自分が治っているかどうか、よくわからないんですよね。
たぶんそうやって相談には答えていくと思います。
ただそれはそれで、受け入れているんです。体調が悪くても、周りに迷惑をかけても、しょうがないかなって。起きてしまったことは戻せないから、いつも、いまここから、はじめ直せればいいと思うことにしています。自分のペースで。
いまの気持ちなら、こんな風に答えるかもしれません。
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