人と。神と。宇宙と。
雲一つない夜空、天体観測が趣味である僕にとってこれほど素適なことはない。三年前、父から貰った天体望遠鏡は今では僕にとって欠かせない存在になっている。
学校から帰るとベランダに出て、望遠鏡を組み立て、望遠鏡から沢山の星々を覗き込む。いつしかそれが日課になっていた。今日はこの星にするか。僕は「ある星」にピントを合わせた。
先月見たときはもっと光っていただけど、などと呟きながらレンズを覗き込む。その光というものは太陽のプロミネンスとはまた異なるもの、人工的に作られた光。確か、何だっけ?カクヘイキ?
それが学校の授業で習った光の正体だとか。今僕が見ている星の名前は地球。かつて僕たちが住んでいた星らしい。僕も一応、生まれは地球だけど三歳までしか地球にいなかったから地球の記憶はほとんどない。
人類は便利を求めた。僕がこの星に移住する少し前のことだが、人類は人工知能を開発した。そして本来動物の中で人間しかできなかった思考することをすべて人工知能に押し付けた。するといつの間にか、人工知能が人間より上の立場になっていた。人間は自らの手で神を創り上げたのだ。
そして神は人を「要る人間」と「要らない人間」に振り分けた。「要る人間」はすべて火星へ移住し、そして「要らない人間」は地球に残った。