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ゴースト・ドラム 北の魔法の物語

"静けさの中で、言葉に絵をあてはめ、絵に言葉をあてはめ、全体を作り上げていった"
理屈ぬきの結果が次々に世界を拓いていく。想いを馳せるのは本を閉じて眠る前に。きっと夢の中へ心の叫びをみつけ会いに来るから。

スーザン・プライス
金原瑞人 訳
福武書店

2022.11.30  読了 

⭐︎ 

"訳者あとがき" が、清々しいです。潔いとも思えました。

 引用 (p216-218より抜粋)

読んだかたならおわかりだと思いますが、この作品、どこからみても、どこから切っても、絶対にファンタジー指数百%の純正ファンタジーなのですが、児童文学によくある、ただ甘くてセンチメンタルなだけの「お子様ランチ風ファンタジー」とはまるっきりちがっているのです。そのうえ、日本ではみみにたこができるくらいきかされている「教育的配慮」ってやつがほとんどない。まあ、このあたりはロバート・ウェストールも似たようなところがありますが。
 冷酷非情で理不尽な皇帝、これに輪をかけて残酷な女帝、まるで虫けらのように殺されていく人々、生まれたときから塔のいちばん上の丸天井の部屋に閉じこめられたままの皇子サファ、サファを助けようとし、奴隷の兵士たちをたすけようたして、どんどん死のなかにつき進んでいく若き魔法使いチンギス、これらの人々がさまざまな形でからみながら作りあげてゆく、死と血と嫉妬と復讐と愛の物語、それも、冷たく暗い冬が一年の半分を占める北の国の物語……かんたんにまとめれば、こんなところでしょうか。
 この作品、さきほどのアメリカの書評のしめくくりの言葉は「子どものための大人の物語」でした。
 スーザン・プライスもまあ、よくこんなファンタジーを書いたものだし、フェイバー(イギリスの出版社)も、よくこんな本を子どもむけにだしたものだと感心しますが、それよりもっともっと感心したのは、なんと、カーネギー賞の選考委員たちがこれを受賞作に選んだこと。
 このしらせをきいたときは「うーん、やってくれるなあ」とつぶやいてしまいました。
 りっぱとしかいいようがありません。
 それから、ついでにというわけではありませんが、これを日本で出版しようという福武書店も四番目くらいにすごいのがしれませんが、こちらはちょっとおいておきましょう。……略…
 心からファンタジーを愛している人々にとって、現代はあまりめぐまれた時代とはいえません。
 そんな中で『ゴースト・ドラム』が生まれたというのは、うれしいことです。物語のたのしさ、視点のおもしろさ、快い驚き、あざやかなレトリック、どこまでもどこまでも広がってゆくイメージの躍動……ここには、ファンタジーのエッセンスがそのままつめこまれています。
 スーザン・プライスの体にはきっと、ロード・ダンセイニやマーヴィン・ピークといったイギリスの傑出したファンタジー作家の血が流れているのでしょう。このような作家が、なにげなく登場することろをみると、イギリスのファンタジーもまだまだ期待できそうです。
 どうか、日本でも多くの読者に読まれんことを!
 ……略…   
 一九九一年四月三日 金原瑞人

この"訳者あとがき"が大好きになりました。太鼓判をおしてくれてます。なんて素敵なんでしょう。


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