ニューヨークジャズクラブ訪問記⑤(Smalls Jazz Club編)
2024年11月、1週間ニューヨークに滞在し、あちこちジャズクラブを巡りました。観たステージは6日間で8公演!①Blue Note New York編、②Village Vanguard編、③Smoke Jazz Club編、④Mezzrow編に続き、最後はSmalls Jazz Club編です。
※①Blue Note New York編は、note公式マガジン「#音楽 記事まとめ」に選んでいただきました。ありがとうございます!
今回のニューヨーク滞在で一番思い出深かったのが、このSmalls Jazz Clubでした。思い出深いどころか、ちょっと奇跡的だったと言ってもいいぐらい。このために今回の旅はあったのかと思うほどです。
スモールズジャズクラブは、その④で紹介したメズローと同じ運営母体で、どちらもニューヨークのジャズコミュニティにおいて大切な場所になっています。(詳しくはこちらにも書いていますので、よかったらどうぞ)
さて、滞在4日目、メズローで1ステージを観た後、いそいそと移動して斜向かいのスモールズへ。メズローとスモールズは姉妹店でありながら、雰囲気はまるで違っています。明るい優しさ、心がほっこりと温かくなるような空気感のメズローに対して、スモールズはエキサイティングそのもの。入り口からインパクトのある意匠が迎えてくれます。
店内もまるで賑やかなクラブのよう。赤みがかった照明の下、観客の皆さんもお酒を飲みながら、あるいは談笑しながら、ワクワクした表情で開演を待っています。
この日はRico Jones(リコ・ジョーンズ)さんというサックス奏者のカルテット(四重奏)。若手トップのサクスフォニストのひとりであり、その③に書いたスモークジャズクラブにゲスト出演されたり、ニューヨークのジャズ雑誌に大きく取り上げられたりと活躍されている様子。演奏が美しいのはもちろんのこと、ステージに立つ姿の絵になること、眼福です。
ご出身はコロラド州で、音楽的にもご自身のルーツをとても大切にされているそう。いろんなバックグラウンドを持つミュージシャンが集まっているのもニューヨークの魅力ですよね(日本人もたくさんいらっしゃいますしね!)
うっとりした気持ちで帰った2日後の土曜、お天気も良く、朝から散歩に出かけました。アッパーイーストサイドの住宅街を抜け、セントラルパークへの入口に向かっていたその時、どこからからサックスの音色が・・・
あの人、まさか・・・!やっぱりあのときの・・・!!ジョーンズさん、この日はたまたまセントラルパークで青空ライブをされていたようです。
思わず演奏の合間に「2日前にスモールズに出演されていませんでしたか?感動しましたー!」とお伝えすると、「とても嬉しいです」とのこと。そして「日本から来ていて、来週月曜に帰るんです」と言うと、なんと「君のために1曲弾くよ」と言ってくださいました・・・!!
お仲間と何やらアイコンタクトし、始まった曲が、ジャズスタンダードの”Autumn In New York“!! とっさのこの選曲、ステキ過ぎません!?ちょうど色づいた銀杏を背景に、美しいメロディを奏でる様子はまるで映画のワンシーンのよう。そして、その優しい心遣いが身に沁みて、忘れられないひとときとなりました。
帰国してからインスタにタグ付けして写真を投稿したら、すぐさまご本人から”it was a pleasure👏🎷😊”というコメントが(涙)ニューヨークのジャズメン、カッコ良すぎます!すっかりファンになってしまいました。またお会いしたいです。
そしてもう一つの素晴らしい出会い。翌日に帰国を控えた日曜日、数日前にメズローでお会いした日本人トランペッター・佐々木亮さんがホストを務める、スモールズでのアフターヌーンジャムセッション(※あらかじめ曲目等を決めず、その場にいる人が自由に参加する形式のセッション)にお邪魔しました。
スタート時間の14:00前に行くと、すでにお店の前は長蛇の列。マネジャーさんがドアを開けながら、「席は十分あるからリラックスしてね」と冗談混じりに呼びかけます。それもそのはず、オープン後も人が来るわ来るわ、客席どころかカウンター、ステージ横のスペースまで、立ち見が出そうなほどの超満員。
そしてステージが始まります。最初は佐々木さんのトランペットに、ギター・ドラム・ベースという編成から。そこに、佐々木さんの”senpai(先輩)”であるピアニストの百々(どど)徹さんも加わって盛り上げます。
そしてセッションはどんどん佳境に。「次、ピアノやりたい人いますか?ドラムは?ベースは?」という呼びかけに、客席からどんどん手が上がり、代わる代わるステージに立つ皆さん。
ステージを見ていて、「ジャズって世界平和なんだなー」って感動してしまったんです。立場も、年齢も、性別も、肌の色も違う人たちが、音楽への愛と日頃研鑽しているスキルだけを持ち寄って集まり、一緒に音楽を奏でている。もしかしたら政治や経済ではなかなか難しいことが、音楽では容易にできてしまう。
私がニューヨークで一番見たかった景色がそこにありました。来て本当に良かった!!
終演後、佐々木さんとニューヨークで、または日本での再会を約束して別れました。折しも今回の滞在はアメリカ大統領選挙と重なり、色々考えさせられることも多かったのですが、なんだか人間の佳き面を見て心が軽くなったというか、こんな風に人と人が繋がれることに希望を感じました。
ニューヨーク、ぜひまた行きたいです。
①Blue Note New York編、②Village Vanguard編、③Smoke Jazz Club編、④Mezzrow編はこちらから。