見出し画像

オラファー・エリアソン—ロンドン芸術大学—東京をつなぐタネが育ち続けて

ベルリンからファビアン・クネヒトとラウル・ワルヒのエネルギー溢れる二人のアーティストが来日して田村友一郎とYuka Tsuruno Galleryで展示「suspense」、さらに東京芸術大学主催のワークショップ「cook」を行った。

スクリーンショット 2020-04-02 13.54.55

3人のアーティストは、オラファー・エリアソンがベルリン芸術大学内で5年間限定で開いた「空間実験研究所/ Institut für Raumexperimente」で出会った。

思い起こせば、この縁は、急逝して数年が経つロンドン芸術大学の副学長のクリス・ウェインライトが結んでくれたものだ。私たちとクリスは、10年以上に渡って環境をテーマにし、アートの社会への役割について問い直し、試行するプロジェクトをロンドン−東京間で行ってきた。そのような中で、クリスがエリアソンと空間実験研究所に私たちを紹介し、ベルリンから彼の学生が訪ねてきた。そして私もベルリンの空間実験研究所を訪ねた。そこではアート作品の制作だけでなく、都市計画、建築、出版部門等総合的な動きが自由に行えるようになっていた。食事を作り、みなでともに食べられるスペースもあり、その最上階には、ヴィジュアルアーティストや現代音楽家の卵が様々な刺激を受けながらクリエートしていく場が設けられていた。それから数ヶ月してラウルが当時私がマネージングしていた東京のアート・イン・レジデンスに参加した。

田村さんとの出会いは、東京藝術大学の修士制作の講評会そしてそれに続いた藤幡研究室との協働プロジェクトにおいて、現実に亀裂を軽やかに入れ込む独特な視点のワークが大変興味深く、1年間のレジデンスプログラムに参加してもらったことにはじまる。この東京でのレジデンスを通して国際的に活動する礎ができ、次なるステップを考えていた田村さんには、迷わずベルリンの空間実験研究所と、ロンドン芸術大学に半年レジデンスすることを勧め、両機関と繋ぐことができた。このパイプを通ったことは、田村さんのその後のアート活動の大きなジャンプ台になったと思う。

女子美術大学で教えていた私のアートマネージングの授業にもラウルと田村さんを招いた。インターナショナルな動きの中で、本来のアートの役割と自らの活動の場を思考する機会としてアートマネジメントを捉えなおすためには彼らのような感性と実践がぴったりだと思ったからだ。ラウルを招いた授業では、彼の持つユニークで柔軟な言葉を超えたコミュニケーションが取られる中で、学生が一体となって自らの身体を使った“動く彫刻”を創造するワークショップを行ってくれ、学生にとっては思いも掛けない生き生きとした特別な体験となった。一方で、田村くんは、自身が経験した空間実験研究所での刺激的なアートの活動を紹介した。「中国に集合場所と日にちだけが伝えられる」そこへどのように向かうのかを考え、シベリア鉄道で向かう。その道中、列車のカーペットを入れ替えたり、たどり着いた街の家を解体したりと、そこで生まれたアート・アクションはとてつもないエネルギーが溢れ、アート爆弾と呼べるようなことが連続していて度肝を抜かれた。


スクリーンショット 2020-04-02 13.53.55

スクリーンショット 2020-04-02 13.54.07

そんな空間実験研究所を出たファビアンとラウル、田村さんが集まって行った今回のワークショップ。閉店したまま放置され、廃墟化している銀座のとある場で、東京藝術大学の学生たちとのワークショップで造られた空間は、ギャラリー空間ではあり得ないアートの生な現場となっていた。コロナウィルスが広まる中で来日をキャンセルしたオラファーからは、“笑いヨーガ”でしめられるユニークなメッセージビデオも送られてきていた。

まいた種が10年を超えて、ここまで育ちつながっていることを、クリスとともに微笑みたいと思う。

スクリーンショット 2020-04-02 13.52.44


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?