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表皮水疱症の水疱とは?

水疱(すいほう)とは水ぶくれのこと。

人の体内細胞には様々な水分等と言われる必要な栄養素が溜まっていて、それらは余程の外傷がない限り体の外に出ることは無い。ましてや、皮膚の中に水が溜まるなどは、火傷やアトピーなどの搔きむしりなどによる外的要因が引き起こすためで、 その時は大抵そのまま放っておくことで体内に戻るものでもある。

しかし、表皮水疱症では、その水分がわずかの刺激や摩擦で簡単に皮膚の表皮下に溜まってしまう。そしてそれは、決して元に戻ることがないため、その内容液の圧でどんどん大きく膨れあがってしまう。そう、どこまでもいつまでも、だ。

なぜなのか。それは、本来、体の内臓物や細胞を頑強に守ってくれるはずの皮膚組織が遺伝子の欠損が原因でその機能を持たないため、その刺激の程度によっては、あっという間に水疱となって膨れあがるのだ。特別痛い、ということはなく、それば静かにしかし、確実に膨れあがる。膨れ始めた水疱やまだ小さいからとそのままににして出かけてしまった際は、服の摩擦や筋力の圧、動作の刺激から、見る間に巨大化する。それが表皮水疱症の水疱である。

水疱の潰し方

表皮水疱症を持つ人は、生まれ落ちた赤ちゃんから生涯にわたって、この水疱と闘うことになる。今現在治る治療法はない。そのため、対処療法として、水疱が出来たらすぐに、自分で潰すのだ。いちいち病院にいく手間も時間もかけることではないのは、それだけ頻発するからでもあるし、潰すだけなら、子どもでも出来る。水疱を潰すことには痛みはなく、使い捨ての注射針や替え刃メスを使い、出来るだけ水疱の膜を壊さないように、水疱の周縁数カ所に穿刺する。そして、軽く全体を押さえて中の内容液を押し出す。この時、慣れない人は、それが医療者であっても、膜だけを刺すことを知らず、中の組織までブスッと刺してしまうことが少なくない。表皮の下は神経が走る肉芽細胞である。痛いと同時に、すぐに出血して、たちまち水疱は真っ赤に滲む。余計な物質が混入することで水疱の治りが悪くなることも多いのだ。そしてすでに膨れあがった水疱の皮膜は、そのまま残しておけば、きれいに上皮化して治してくれる効果もある。潰す時には、極力穿刺する箇所の位置と大きさに注意が必要なのだ。

水疱を潰す行為やガーゼ交換は医療行為なのか

表皮水疱症は、水疱だけではなく、びらんという皮膚が剥けてただれる症状も大きな特徴である。毎日何度も水疱を潰す処置と、入浴して傷(びらん)を洗浄し、創傷被覆材(ドレシッング材)を貼付する、包帯やチュビファーストで固定させる、という一連の処置ケアを繰り返す。根治する治療法がなく、長期的な療養を余儀なくされ、そして高額な治療費がかかる、これらの条件を満たしているため、表皮水疱症は指定難病なのである。そして、なにより、毎日欠かせない水疱処置とガーゼ交換は、今でいう医療的ケア児と同様の配慮と理解が求められる疾患でもある。しかしながら、水疱処置もガーゼ交換も、学校では医療的行為として、親の付き添いを求められ、ヘルパーの協力も得られない。専門医によれば、水疱処置もガーゼ交換もその行為が命に関わるものではないので、親が適切に説明しやり方を伝えれば、誰が処置しても問題はない、とのこと。それでも、現状では、責任の所在を問われる不安と、面倒なことを考えようとしない排他意識で、表皮水疱症の子供たちの教育環境も親からの自立を妨げることでしか成り立っていない。

面倒なことに無関心ないまの社会の中で、少しの工夫も配慮と手助けで、この社会が誰でも心豊かに生きていけるとしたら、私たち表皮水疱症の患者と家族の現実の悩みを一人でも多くの人に語り伝えて、温かい社会づくりに貢献できるのではないだろうか。私たちは、たとえ小さな一歩でも、くじけることなく、前を向いて、仲間とともに、歩き続けるしかないのだ。

たかが水疱、されど水疱。自分たちに与えられたこの難病は、何かを伝える意味があるから存在しているのだと、子供たちの笑顔をみるたび強く信じて行動できる自分が誇らしい。






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