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【日記】カモシカ。

今月初めの頃、朝の散歩の時、カモシカに出会った。
ここは田舎だけど、一応住宅地なので、毎朝の散歩中にカモシカに出会うなんて、人生で初の出来事だった。

朝の散歩は、いつも同じコース。
国道と県道の歩道をぐるりと歩く、約30分の距離。
小型犬の我が愛犬"Mねーさん"の歩く速度と、ふんふん匂いチェックを含む道草の回数によって散歩にかかる時間は多少違ってはくるけど、コースはいつも同じ。

コース中、一番大きい道路の国道で、カモシカは突如あらわれた。

Mねーさんと私は、国道沿いの歩道を歩いていた。
反対側の方から道路を横切ってきた大きな生き物が視界に入り、一瞬、それがカモシカだと認識するまで、なんだか分からない状態だった。

早朝、国道を走る車は少ない。
けれど、カモシカが横切る時、ちょうど軽自動車が近づいてきた。
そんな時、私の視界にカモシカが入ってきたのだった。

シュッとした脚長の、可愛い綺麗な目をしたカモシカだった。

「あっ、あっっ、あーっ!!」

としか、咄嗟にはまともな言葉が出ず(後から何度思い出しても、残念な反応の声だった)

軽自動車を前にカモシカは、ピタリと止まり、軽自動車の方を見つめたままだった。
驚いた様子もなく、逆に堂々とした姿に見えた。
直前で、軽自動車は止まり(本当に本当に良かった)、数秒間その場は止まったままだった。
カモシカが動き出し、国道を渡りきり民家の庭に入っていった後、軽自動車も動き出し、止まっていたその場の時間が動き出した感じだった。

私達といえば、
Mねーさんは、短い脚をフンッて踏ん張り、耳をピンと立てていて、チラリと私の顔を見た。

私は、マスクの中の口は開いたまま、カモシカの美しさと、この後の心配の気持ちでぐるぐるになって、Mねーさんの顔を覗きこんだ。

「カモシカだよ。カモシカがいたよ。Mねーさん。」

この私の言葉には、完全無視のMねーさんだった。

野生動物なのに、こんなところにあらわれて、この後どうするんだろう。

非常に非常に心配だった。

私達、一匹と一人は、とぼとぼと残り散歩コースを進んでいった(とぼとぼは、私だけだったかもしれないけれど)

散歩もそろそろ終わりに近づき、コンビニを通り過ぎた頃だった。

鉄塔の下、草むらにカモシカがいた。

私達がぐるりと歩いている間、直線コースで歩いてきたようだった。

歩道の上の一匹と一人。

草むらの中のカモシカ。

見つめ合って、

「あなた、大丈夫?早くお家に帰りなさい。
車と人間に気をつけて。お家に帰ってね。
気をつけてね。」

と懇願するように話しかけた。
Mねーさんが、恐れて吠えたりしないよう、抱っこしたまま。

私達が少し通り過ぎたら、カモシカは、草むらを出て、国道沿いを走り始めた。

姿が見えなくなっていった。

その後、カモシカの話をする人達もいなく、田舎ならではの野生動物出現のTVニュースにも登場はなかった。

毎日、あのこが、あのカモシカが、無事お家に帰れたか、もしくは住み良いところに辿り着いていますように、って祈っている。

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