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(全文無料) トビリシの計画 (1)

そろそろジョージアに行く時が来た感じがする。飛行機は片道で、僕が今いるドイツからは9000円。日本からでも5万円台からある。貸し切りのアパートで一泊千円以下。ドミトリーなら数百円からある。おそらく食費も現地交通費もあまりかからないだろう。

ジョージアは、最近までグルジアと呼ばれていた。そもそも、ソ連崩壊してから独立したのが1991年で、「グルジアってロシア語由来だから、ジョージアって呼んで!」と日本に言ったのが2014年らしい(英語とかでは元々ジョージアと呼んでいた)。しかしジョージア国内ではジョージアのことを「サカルトヴェロ」という。日本も、外からはジャパンと言われてるけど国内ではニホンかニッポンと呼ぶ。それと同じだ。

昔からグルジアに一目置いていた、という人は多いだろう。なにより語感がいい。ボルシチ、スメタナ、モルドバみたいな良さがある。ブルバキなんかも良い。(ブルバキは架空の数学者の名前だ。フランスの数学者集団がみんなで1つの名前で活動していた。)

でも「ジョージアって呼んで」ってことなんで、それを尊重してジョージアと呼びたい。たとえジョージアと呼んだところで、おれたちにはまだ「トビリシ」がある。トビリシはジョージアの首都の名。いい響きだ。そして名物料理、小籠包みたいな「ヒンカリ」がある。

もしあなたがトビリシに呼ばれている気がするとしたら、それは偶然ではない。ジョージアはトルコとロシアとに南北を挟まれ、西に黒海、東にカスピ海がある。日本人が「アジア」としてよく知っているのはインド・パキスタンまでで、その西にあるタジキスタン・アフガニスタンのことまではよく知らない人が多いと思う。もっと西のヨーロッパ・エジプトのことや、南のイラン・イラク・サウジアラビアのことはなんとなくイメージが湧くかもしれない。だけどその手前にあるジョージア、アゼルバイジャン、トルクメニスタンなんかのエリアは、なかなか馴染みがなく、文化的な距離によっても日本人の好奇心を強く刺激するかもしれない。僕もその1人だ。

トビリシのいろんなエリアの写真をインターネットで見る。旅行に行った人のブログなんかも見てみた。良い感じだ。vlog(ブログのビデオ版)も良いな。賃貸物件サイトやレストランやスーパーの値段、現地で暮らしている人の家計を見たりしたら、月5万円で余裕で暮らせるみたいだ。1時間1000円の稼ぎだとすると、50時間で良い。

物価が安い国はインフラが整ってないとか治安が悪いとか、そういうイメージがあるかもしれない。たしかにそういう傾向はあるけど、一概にそうとも言えないと僕は思っている。実際評判も良いようだ。

とくに僕は、一切停電しない電力供給とか、すぐ届く運送とか、コンビニみたいなシステムは必要ないと思っているし、むしろその裏で余計な負担や非合理を生み出していると思っている。医療や治安維持など、プライオリティの高い部分以外では、無理のないシステムが無理のないリラックス具合で運営されて、それでなんとか回っていくほうが人間らしい社会で居心地がいいと思っている。

しかし、だ。いざ現地情報を集めようとすると、アルファベットが「ანბანი」。こんにちはが「გამარჯობა」。この言葉…この文字。すごい丸い。33文字ある。あまり見分けがつかない。ネットでライブ配信をやっているニュース番組を見てみると、当たり前だが、全然わからない。

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だけど、やればできる。僕は語学が好きだ。ネイティブレベルとかすごく高いものを目指さなければ、やっただけできるようになる。語学って、誰とも競争しなくて良いし、誰かが上達したからといって他の人の語学力の価値が下がったりすることもない。1日目、まずは33の文字を一揃い書いた。

(つづく)
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