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No.3 捕獲

少年のようにすくすくと大きくなったかやまは
5歳になった。

相変わらず短髪にTシャツにズボン、
スカートなんかまるで履かない。
女の子の風貌はまるでなかった(笑)

当時かやまは【昆虫取り】にハマっていた。
その中でも特に『セミ取り』に。

夏場は決まって休日の朝は
土日ともいつも
7時には起きていた。

何故かって?

土曜日の朝は睡眠を邪魔する
ギャーギャーうるさいセミ達を
網ですいすい捕獲するため。

日曜日は7時頃から
TVちゃんねる6で放送されていた
大好きな戦隊物とプリキュアを
リアルタイムで見るためだ。

少女かやまは、女の子が好むような
キラキラした【プリキュア】よりも
正義のヒーロー『仮面ライダー』に
すっかりハマっていた。

セミ取りやら仮面ライダーやら
女の子なのに好きな物はまるで
男の子のよう。

夏の暑い土曜日の朝から
せっせとセミを捕まえる様子を見て
近所のおじちゃんやおばちゃんは
かやまのことを【虫取り名人】と
呼んだ。

そのあだ名は当時のかやまには
悪いあだ名ではなかった。
むしろ誇りを感じていたかもしれない(笑)

一歩自分が知らない町
(スーパーや郊外の公園)に出ると
「僕?」と話しかけられることが多かった。

聞く人の気持ちもよくわかる。
短髪にTシャツにズボン。
何度も言うが、風貌はまるで
男の子なのだから。

【セミ取り名人】というあだ名は
この上なく心地よかったが、
男の子のように「僕」と間違われるのは
どこか腑に落ちず、
いつも怒っていたらしい(笑)

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