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No.6 根性

【いるか塔】を作って約一年が経った。

一年経っても【いるか塔】という物語は
かやまの口からどんどん伝えられた。

といってもただ一人で
言いふらしているだけだが(笑)

よくもまあそんな嘘ばかりを言いふらして
虐められなかったなあ。と、
今思えば不思議である。

これは私の憶測に過ぎないが
もはや周りの子達から
呆れられていたのではないだろうか(笑)

その一方で尊敬されていたかも知れない。
そう思うのは何故か。

当時の私はすごく頑張り屋さんだった。
努力して何でも成し得ていた。

(6歳の何でもというのは
22歳の今と比べると
規模が全然違うのだが)

竹馬、鉄棒、折り紙手裏剣、泥団子

特にこの3つで私は輝いていた。

竹馬では園児の中で一番高い馬に乗って
園内を悠々と歩いてみせ、

鉄棒では手にできた豆が潰れるくらい
毎日毎日練習し、
逆上がり100回を園児の中で誰よりも早く
クリアしてみせた。

折り紙手裏剣は、
いろんな色を組み合わせて
何百通りもの色違いの手裏剣を作り
みんなに見せびらかせていたり、

泥団子は誰よりもピカピカになるまで
一生懸命磨いて、下に落ちたくらいで
傷つかない泥団子を作り、
園内で泥団子博士の称号を得ていた。

園児の中で誰よりもNo.1に
こだわっていたのがこの私だった。

みんなから「すごい!」の声が欲しくて
必死だった。

(今思えばその時から、承認欲求が誰よりも
強かったのかもしれない)

そんな努力の塊で君臨した人を
誰が卑下するだろうか。

それにかやまは下の子達の面倒見も良く、
先生達からの評価もよかった。

同級生や下の子達、先生までもが
太鼓判を押すくらい『えらい子』として
称されていた私は、園内で鼻高々に
過ごしていたに違いない。

【いるか塔】での嘘は恐らく、
周りから仕方なく許されていた物として
捉えるのが適切だろう。

その嘘がなく、素直に羨ましいと言えば
もっともっと人気物になれていたに
違いないのに(笑)

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