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アフターコロナ時代、働き方はどう変わるのか?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、急激に進んだと言われるリモートワーク。

厚生労働省が掲げた「新しい生活様式」が推奨される今、働き方はこれからどう変わるのか、カヤックLiving代表の中島みき、名取良樹、中村圭二郎、木曽高康、高垣陽子、SMOUT移住研究所 編集長の増村江利子がオンラインで話しました。

「何のために働くのか」を問い直す

中島:前回は、コミュニケーションがこれからどう変わるのかについて議論しましたね(その時のまとめはこちら)。今回は「働き方」はどう変化するのか、みんなで話してみたいなと。

中村:リモートワークをする人が確実に増えていると思うんですが、この働き方がいい人もいれば、合わない人もいるのかなと。

木曽:リモートワークが前提になると、オフィスの意味が問われますよね。

中島:希望者は在宅で、という企業も出てきていますね。そうなると、新卒、転職市場にも影響が出そうだなと思って。例えば「あの会社、週5日(出社)でしょ?」っていう会話が……。

高垣:採用情報の「企業の魅力」にリモートワークが書かれそうですね。自宅でかかる通信費も払いますとか。

中島:そうそう。優秀な人材を採用するために、企業側が戦略としてリモートワークを導入することだってありうる。

中村:確かに。この間、役員で年収2000万円の窓際族を、Windows2000と呼ぶって話を聞いて。リモートワークになると、Windows2000は対応してないからオンラインコミュニケーションができない、もうつながることもできないって。

木曽:古いからね。

中村:その話、ちょっとつらいなと思って。

高垣:違う人種が生まれそうですね。変革期にありがちな。

増村:オンラインコミュニケーション格差ってことですね。

木曽:実際には、インフラの格差もあるね。教育でも、自宅のWi-Fi環境が整っていないとオンライン授業も難しい。

中島:今って結局、子育てをしながら在宅で仕事をしているお母さんたちが、臨機応変に対応できていたりして、短時間で成果を出す人が可視化されたり、認められたりしてきていますね。出社して、8時間仕事をして退社するって、過去のものになりつつあるんじゃないかなって。

木曽:時間と成果物の関係と、それに対する報酬の考え方って難しいですよね。必ずしも時間をかければいいアウトプットが出るわけではないし、生産性が高い人ほど短い時間でいいものつくっちゃうから。

増村:本当ですね。コロナ禍で、ただの風邪でも保育園から登園自粛をお願いされるから、夫にお願いして午前中だけ時間を確保させてもらって、8時間かかっていた仕事をどう効率よく4時間で作業するか、結構考えました。

中島:成果物のアウトプットの質や量を変えずに、時間を圧縮できるのかって、これからますますテーマにのぼりそうです。

高垣:根本的に考え方を変えなきゃいけなくなるんでしょうね。

木曽:仕事そのものの位置付けも考え直すタイミングになっているよね。何のために働くのかを考える機会が増えた気がする。通勤時間が減ったから、その分時間は増えたはずなんだけど、その増えた時間で何をするのかで変わってくるかなと。

「ワーク・イン・ライフ」の時代へ

中村:ちなみにさ、通勤時間って、みんな今までどれくらいかかってたの?

木曽:俺は往復1時間くらい。

中島:私は3時間。中村さんは4時間でしょ。

中村:4時間。

名取:俺は1時間。

中村:その時間を、どう使ってる?

木曽:俺は別の仕事をしています。仕事じゃない仕事。プライベートの開発とか。

中島:私は逆に仕事しちゃってる感じがしますね。

高垣:昨日は絵を描きましたね。料理をつくりながら鼻歌を歌って企画を考えると、アウトプットがすごくいい!リラックスしながら、頭の片隅には仕事もあって。

中島:わかる。結構いい時間ですよね。

名取:思いがあれば、人はどんなに忙しくても時間をつくるよね。時間ができたから、何かができるようになるんじゃなくて、もともとできている人はできていると思う。俺、仕事をどう捉えるかが変わると思うんだよね。

木曽:名取さん、変わったんですか?

名取:いや、全然変わらない。

中村:変わったような言いっぷりだったけど、違うんだね。

一同:(笑)。

名取:仕事が釣りと同じようなものだったら、朝何時でも起きれるんだけどね。ちなみに今、通勤時間はどこにいったかというと、睡眠時間になってる。

一同:あー。

中島:4文字で簡潔なやつ出てきましたね。睡眠時間。

中村:今までって、「連続する8時間」が雇ってもらう条件だったと思うんです。子育て中のお母さんとか、時短勤務とか、細切れの時間で仕事をしなきゃいけないわけじゃないですか。僕も今、子どもの保育園が登園自粛で家で子どもをみながら仕事をしているんだけど、連続で8時間って、考えてみるとそんなに意味はないよなあと。そんなに集中力は続かないし。はい、牛乳ね(←子育て中)。

木曽:8時間っていう時間が適正なのかもわからないですね。

中島:うん、8時間ってなんなんだろう。

木曽:なんとなく24時間の1/3。

一同:(笑)。

高垣:1/3仕事、1/3プライベート、1/3睡眠?

増村:これまでの「ワーク・ライフ・バランス」の議論って、連続で8時間だったから、そう区切ってバランスを取るしかなかったってことですよね。

中村:そうか、「ワーク・ライフ・バランス」ってこと自体が、アフターコロナ時代は変わりますね。

中島:確実に死語になりそう。

木曽:長野県大町市にエンジニア職の友人がいるんですが、彼は一人で勝手にサマータイムを導入しているんですよ。

一同:へー(驚)。

木曽:時計を2時間早くして、今朝5時くらいに起きて、畑作業してから仕事をして。そういう時間の使い方は面白いなと思ったんだよね。

中島:2時間前倒しで生活するってことね。面白いね。

増村:そう、さっきの「ワーク・ライフ・バランス」の話だと、その彼は完全に「ワーク・イン・ライフ」なんですよね。暮らし全体の中に、仕事が含まれている。大切にしたい暮らし方があって、仕事もその中でするっていう無理のないスタイル。

木曽:仕事が楽しければ時間は関係ないんだよな、8時間だろうが10時間だろうが。時間を対価に報酬をもらう契約そのものがおかしいってことなのかな。

中島:ブルーカラー、ホワイトカラーって言葉がありますけど、ホワイトカラーだって結局は労働集約型で。

高垣:プロジェクト型と、プロジェクト型でない仕事、の違いですかね。

木曽:ジョブ型雇用(仕事に人を割り当てる雇用の形)かメンバーシップ型雇用(人に仕事を割り当てる雇用の形)って話か。

中島:例えばコールセンターのオペレーターは、時間で換算するお仕事なんだろうな。

木曽:時間でできる仕事って、それこそAIに置き換えられそうなものが多いですよね。

高垣:でも、例えば医師って時間型なんですよね。完全にAIに代わるかというと、そうではない職種もありそう。医師は、緊急性が高いということなんですかね。コールセンターもある意味、緊急性が高いと言えるかもしれない。弁護士はジョブ型。

名取:アウトプットの量がコロナ禍で増えたかっていうと、多分増えてないんだよね。仕事の中身は何も変わっていないし、本質は変わらない。どちらかというと仕事がメインのライフスタイルを送る人たちが多かったけど、通勤時間とか、業務の効率化で生まれた時間によって、ライフの中に仕事を位置づけることができるようになってきた、もしくは見直すことができるようになった気がするね。この状況下で、どういうふうにもう一度考え直すか。

みんな同じ体験をしているから、もう嘘はつけない

中村:会議にしてもイベントにしても、オンラインでのやりとりが増えていますね。コロナ禍でパフォーマンスを上げている人の話を見聞きすると、リアルをオンラインに置き換えるとパフォーマンスは下がってしまう。でも、オンラインだからできることにフォーカスしている人は、倍以上に引き上げることができているんじゃないかなと。

中島:これまでの仕組みや体制をそのままオンラインに移行するんじゃなくて、オンラインを基本として、新しくつくるってことですよね。

木曽:そうですね。

中島:リアルでやっていたことは、何十年にも渡ってみんなが磨きに磨いてきたプロセスだから、やっぱりリアルでやるのが一番いいんでしょうね。だから例えばハンコの文化を、このリモートワークとかオンラインの文化に入れると最悪で。

高垣:水と油ですね。

名取:新たな方法を考えるべきなんだろうね。

中島:そうですね。リアルの文化をオンラインの文化に持ってこよう、移設しようとするからうまくいかない。

高垣:考え方を少し変えないといけないけど、オフラインの文化をバカにすることはおかしい。だからミックスのポイントをどう設計するかですね。

増村:そうすると今、移行期として捨てることとかやめること、考え方を変えなきゃいけないことが浮き彫りになってきているのかな。

中島:そうですね。自粛モードが解除されていくにあたって(※)、働き方って戻らないことが明確なんですよね。みんなで同じ体験をしているから、もう嘘はつけないってことなんだろうなって。緊急事態宣言が解除されても3密は引き続きって話だから、そうすると時差通勤を本気で考えるとか、(※2020年5月15日時点)

高垣:満員電車、怖くて乗れないですよね……。

増村:「新しい暮らしの様式」ならぬ「新しい働き方の様式」は、例えば時差通勤をすることかな。

中島:大喜利っぽいですけど、「新しい働き方の様式」では他にこんなことも考えられる、というの、あります?一つは時差通勤。

高垣:とりあえず会いましょうが、とりあえずオンラインでって言葉になるかもしれませんね。

名取:打ち合わせは、ほとんどオンラインで済むよね。

高垣:名刺はなくなるかもしれませんね。

増村:リモートワークが増えるのはもちろんですけど、副業も増えそうですね。

木曽:それ、すごい思ってました。週5日の出社前提が変われば、一つの企業に勤めるという前提も変化して、複数の仕事に関わるのが普通になるんじゃないかと思っていて。さっきのプロジェクトベースの話じゃないけど、

増村:ジョブ型になっていく。

中島:8時間連続の勤務じゃなくなるんだもんね。

木曽:4時間×2とかでもいけるし、×3でもいけるし。逆に一社に勤めるのはリスクになるんじゃないかと。

増村:中小企業の社屋は、シェアオフィスでいいですよね。

中島:そうなんですよ。20人くらいの企業だったら5席くらい借りておいて、あとは会議室が使えれば。

木曽:リモートワークにおけるバーチャルカンパニーの在り方ってすごく面白いなと思っていて。いろんな企業の人が、リモートでコワーキングをする。そういう空間におけるコミュニティのルールとか常識が自分のライフスタイルに近いかどうかで、働く企業を選ぶようになるんじゃないかなと思ったんです。

中島:今までだったら給料とか福利厚生、会社からもらえるもので選ぶことがベースになっていたけど、自分の生き方にフィットしているかで企業を選ぶようになる、みたいな。

名取:自分の生き方とか、暮らしと仕事を切り離して考えている人もたくさんいると思うんだけど、これからは生き方や暮らし方の延長線上で仕事を考える人が増えるかもしれないね。

増村:フラットになっていくってことなんですかね。暮らしと仕事も、企業と自分という雇用関係においても。

中島:確かに。

名取:つながり方を選択できるというか。選択肢が増えることはいいことだと思う。

高垣:都市部では、仕事とプライベートを切り離している人が多そう。地方はそこが一緒じゃないと回らない仕組みにもなっているかなあと。だから都市部には、潜在的に仕事と暮らしを延長線上に置きたい人がたくさんいる気がしますね。

木曽:コロナ禍で、その動きが加速しそうだね。

名取:そうだね。いずれにしても、選択肢が増えることによって、自分にフィットする働き方を見つける時代になるのかもしれない

中村:職種にもよるかもしれないですね。例えば医療従事者、介護福祉士、スーパーの店員さんとか、社会の機能を維持するために働くインフラを支える職種の人たちは、ちょっと考え方が異なるかもしれない。ちなみにさ、これまでの仕事選びって、職場までの距離に縛られていたと思うんだよね。出社することが前提だから。仮に4時間だけ働くという前提になると、企業と人のマッチングの可能性は増えるかもしれないですね。

木曽:競争率が上がりますよね。全国のスキルの高い人と競わなきゃいけないから。

中村:そうかも。出社前提がなくなれば、その場所にとどまり続ける意味がだいぶなくなるよね。

名取:それはいいね。軽やかな動きが促される。

中島:企業側が、働き方についてどんなビジョンを持つかですね。

名取:出社をしないでオンラインでコミュニケーションをするのって、信頼関係を構築しにくいと思うんですよ。できないことはないけど、管理もしづらい。だから社員を信頼できないと、この働き方は提供できないですよね。

中村:出社をすることに、意味が必要になりますね。

中島:その通りだと思う。自分はどこで暮らしたいのか、週何日出勤するのがいいと思うのか、自分のものさしを持つ必要があるのかもしれない。

増村:私はもともとリモートワークでしたけど、2〜3ヶ月に1度の出社でも問題はなかったですね。それ以外にも出張とかで会う機会があるわけで、その方が逆に、会社の中では見れない側面を見れたり、話せたりする。ただ、slackといったオンラインコミュニケーションツールをいくら追いかけても今起きていること、これから起きようとしていることは捉えにくいところがあるので、オンラインでいいんだけど、やっぱりみんなで話す場には参加したいなと思いますね。

中島:きっと、回数とか頻度ではないんですよね。

中村:リモートワークになると、ツールも大事ですね。例えばslackだけでやりとりをしようとすると、そのコミュニケーションが得意な人が場を制してしまうこともある。話せばたった10秒で伝わることが、なかなか伝わらなかったり。情報を伝える手段において得意、不得意があるんでしょうね。

中島:私は基本的にslackだけでは思いは伝えきれないと思う。あくまでコミュニケーションの補助機能のひとつ。

中村:これ、俺のすべらない話なんだけど、slackで「今日オフィスに帰ってくる?」って名取さんに連絡したら、すぐに電話が掛かってきて「帰るよ、どうしたの?」って。

一同:(爆)。

高垣:オンラインで済むからと雑なコミュニケーションをすると、伝わらないかもしれない。思いやりが必要ですよね。

中島:結局は思いやり。

木曽:日本人って、同質であることが前提だけど、これからは人種が違うとか、違う前提、知らない前提でのコミュニケーションの様式に近くなるってことだよね。

高垣:多分、日本人がオンラインが苦手な理由はそれだと思う。

中島:多様がベースにないからかな。

高垣:で、なんでわかってくれないの?ってなると、知らない間に双方が傷ついちゃう。多様が前提になれば、変わるんだろうなあって。

企業の社会を変えるビジョンが、自分と同じかどうか

中村:話は変わるんだけどさ、サードプレイスって考え方があるじゃないですか。自宅や職場とは別の、第3の居場所。これはフェリス女子大学の春木良且先生がSNSでシェアしていたんだけど、今、コロナ禍で広まっているオンラインの場って、僕はこの3つの場(自宅、職場、サードプレイス)をつなぐものだと思ってたの。でもその投稿では、現在のオンラインの場は、フォースプレイスであると言っていて。つなぎもするけど、全く別の場所であると。第4の場所ができることによって、いつでもどこでも3つの場が接続できるから、住むところ、働くところがこれからどんどん広がっていくんだろうなって思ったんだよね。

高垣:オンラインが場というポジションを得たってことですよね。場になるための技術的開発も進んだ。

中島:私たちも今、フォースプレイスにいるんですよね。

木曽:自分の意思がオンライン側にあるのか、リアル側にあるのか、時間の配分も人によって変わりそうだね。それこそ今、バランスを探っているところかもね。

中島:自分たちがオンラインの場に移住したんでしょうね。オンライン移住。

高垣:お試しオンライン移住してみた感じですかね。フィットするかどうか、判断は各自にお任せで。

増村:そうなってくると、ますますセルフマネジメントというか、自分らしさってのはどこにあるのか、自分を見失わないことの大切さも問われますね

木曽:問われますね。

中村:すごく自由でいいと思うんだけどさ、これからの時代、何をもって会社とつながっていたらいいんだろう

高垣:所属という概念が何になるのか。

中村:会社に所属する意味とか意義とかもあるけど、

木曽:お金かな。貨幣。

中村:でも、お金以外で会社とつながることもできるよね。どこでつながり続けるんだろうね。

中島:さっき名取さんが言ってた、ライフにおけるアイデンティティの延長線上にあるかが所属の意味になるのかなって思いました。いろいろな種類があっていいんだろうなって。

木曽:企業のカルチャーと自分がつながるかどうかな気がするな。

増村:自分ごととしての問いをそのまま持ち込むことができれば、当事者になれる。だからこそ企業にも、社会にもお役に立てそうですね。

木曽:うん、貢献している感じは必要かもしれない。

増村:あとは単純に、その人と本当に仕事がしたいか

中村:その感覚、結構大きいと思うなあ。

木曽:子どもだったら誰かと遊ぶ時に理由はいらないけど、大人になってから誰かと何かをするのって、仕事にしろ遊びにしろ、言い訳が必要な面もあると思ってるんですよね。

中村:俺はね、企業が社会のこの部分を変えたいというポイントが、自分と同じかどうかかなと思った。つながるポイント。

木曽:課題への共感みたいな。

中島:さて、次は最終回、地域で自分らしく生きていくというテーマで、また話しましょう。

(次回へつづく)

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