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アフターコロナ時代のコミュニケーションって?

新型コロナウイルス感染症の発生という予想外の事態に、当面のリモートワークを余儀なくされたカヤックLivingのメンバー。オンライン会議ではコロナ禍での近況報告はもちろん、世の中がどう変わりつつあるのかが話題にのぼります。

2020年5月25日、日本では緊急事態宣言が全国で解除されましたが、新型コロナウイルスの感染リスクがなくなったわけではありません。厚生労働省が掲げた「新しい生活様式」が推奨される今、これからの暮らしや働き方、価値観はどう変わっていくのか、カヤックLiving代表の中島みき、名取良樹、中村圭二郎、木曽高康、高垣陽子、SMOUT移住研究所 編集長の増村江利子がじっくりとオンラインで話しました。

人と会うことが価値になる

中島:新型コロナウイルスの感染拡大防止につなげるために、「新しい生活様式」の実践例が公表されましたよね。社会のさまざま場面で、新しい暮らしや働き方の模索が始まりつつあるけど、「新しい生活様式」ってどんなものなのか、みんなで話してみたいなと思ったんです。自身や家族、地域を感染拡大から守るための具体的な手段というよりも、私たちの暮らしがどこへ向かうのかという視点で。

増村:このコロナ禍で大きく価値観が動いたなと思ったことを一つ挙げると、それまでマスクは買って使い捨てるものだったのに、つくるようになったってことなんじゃないかと。なければつくればいいということに気づいた。これは、じつは大きな変化だと思うんです。

中島:確かに。自分でつくれない場合は、誰かがつくってくれたものを買う。ガーゼも売り切れたりしていますよね。おしゃれなマスクも増えて、マスク込みでファッションになりつつありますね。

木曽:ファッション的な要素を帯びてきたのは面白いですね。みんながつけるものになると、自己表現の一部になるんだなと。

中島:これまでマスクって自分を守るためのものだったけど、今回は自分が感染していた場合に、相手に感染させないためにマスクをする。これって利他と自他っていう大きな違いですよね。

木曽:自分の暮らしの、何が変わったんだろう。最近オフィスに来ちゃってるけど……。

名取:オフィスに人がいないよね。

木曽:オンライン会議が増えましたね。オンライン飲み会とかも。例えばzoomって、意図的に時間を設定しないと誰かと話せないから、繋がり方とかコミュニケーションの方法が変わりつつある気がしています。

中島:わざわざ時間を設定すること自体が、変化ってことだね。

木曽:そうです。意図的に誰かに連絡しないと話さない環境であることは、以前とは違う。

名取:今って、“有事”じゃない?ちょっと抑圧、制限されているから、制限された反対のこと、真逆なことに対して意識が向くのかもしれない。外出できないから外出したいとか、人と会えないから人と会いたいとか。『ホンマでっか!?TV』で言ってたんですけど、

木曽:出た、名取さんが好きな『ホンマでっか!?TV』。

名取:心理学の専門家が、こういう有事の時に大事なことを決めるべきではないって。

一同:ヘえーーー。

名取:抑圧された状況の、真逆のことが解だと置かれがちだって。フラットな状況で判断をしたほうが正しい方向性を導き出せるって、心理学の専門家がおっしゃってた。

一同:おっしゃってた(笑)。

増村:私、長野県諏訪郡にいますけど、自宅の畑を放ったらかしだった周りの奥さんたちが、みんな真剣に畑をやるようになりましたね。少なからず危機感があるんじゃないかなと。

木曽:食べられるものを確保しておこう、みたいな。ホームセンター、めちゃくちゃ混んでますもん。

高垣:特需だって。私も、植物をたくさん購入しました。

中島:確かに。私、最近しいたけの栽培キットを購入したんですよ。植菌済みのしいたけの原木。家にずっと篭っているから、生きているものを見たいのかな。

名取:食べ物に対しての危機感と、人に会うことの制限と。会うことに制限はあるけど、オンラインで話をすることは可能になっている。だけどそこで足りない何かを、生きているもので補完しているのかもしれない。オンラインコミュニケーションに欠落しているものを、他の何かで補完するっていう。

高垣:私、魚を捌くようになりましたね。

名取:それ、死んでるよね。

一同:(爆)。

木曽:センスあるなあ。

名取:自分は、家での缶詰状態がすごいストレスなんですよ。人とオンラインでやりとりをしているけど、会っている感覚はあんまりないですね。そもそも会っている感覚を得られていたら、家にいてもそんなに缶詰の感覚になってない。強制的に缶詰にされたことで、人と会うことが、例えば昨日、木曽くんと会ったりするだけで、すごいプレミアムな感じがします。

木曽:それ、ありますよね。人と会うことの意味が変わった感じがする。

名取:そう、日常的に会っていたから、大切さとか恩恵ってあんまり感じていなかったけど。木曽くんの憎まれ口も、普通にいいなって。

一同:(笑)。

中島:郷ひろみの『よろしく哀愁』って曲で、「会えない時間が 愛育てるのさ」って歌詞が出てくるんですけど、

木曽:適度に世代を感じる気がします。

中島:そうだよね、って。先日、知人から教えてもらったんです。

名取:最終的に会うってゴールがないと、多分育てられないんですね。前提として会うことがあるってことなんじゃないかな。


想像できていない未来

木曽:会うことで、いかに非言語情報を得ていたかってことですね。この画面上に映っているのは首から上ですけど、この画面上だけでは見えていない部分から、いかにいろいろ感じていたか。

名取:オンラインだと、パンツを履いているかわかんないもんね。

一同:(爆)。

高垣:オンラインって、奥行きがないですよね。情報量がだいぶ減る。逆に、共有されていない情報をどう埋めるかがオンラインコミュニケーションの鍵かなと。

中島:なるほど、奥行きね。

名取:仕事においては、その奥行きがあまりいらなかったりする部分もあるじゃない?量を回さなきゃいけない時には、そこまで読み取らなくてもよかったりする。

高垣:ただ、人との信頼関係を築くために奥行きは必要な気がします。

名取:そうだね。初めましてって人とオンラインで話すと、画面共有したら相手の表情が見えないし、どこに向かって話しているんだかわからない感じがする。ただ単に情報を提供するだけだったらいいかもしれないけど、そうじゃない場合はね。だからオンラインでできること、できないことが明確になった。

中村:もともと僕は物販をやっていたんだけど、当時、インターネットがどれだけ発展しても、靴と洋服は絶対にネットで売れないって言われてたんですよ。試着をする必要があるから。リアルな場は残るんだと思っていたのに、サービスが改善されると、もう楽々とそのハードルを飛び越える。今そうした未来が想像できていないだけで、もしかすると会うことがゴールじゃなくなるのかもしれないなって思った。

木曽:プロジェクトを進める上では会わなくてもお互いに作業できるし、信頼関係も築けるようになっている。でも、プライベートで人との関係を築く時は、そうはならないのかなって感じていますね。

中島:仕事は、目的が明確だからですよね。


「過」と「疎」、自分自身の価値観をどこに置くか

木曽:家族も含めて、自分の生活圏内に目を向けるというか、地域を意識するようになった気がしますね。近所の飲食店のテイクアウトを気にするようになったり。

中村:僕は実家が長崎なんだけど、東京に来て驚いたのは、店員さんにみんな優しいんだよね。ごちそうさまとか、ありがとうっていう言葉を聞く頻度が、長崎よりも東京のほうが多いと感じたのね。で、このコロナ禍で、それがもっと増えた気がする。他にも、ゴミ収集の作業員と、飲食店の人が「頑張ってね」「あなたも頑張って」って。「こんにちは」以外の一言が追加されていることに気づいて。

中島:なるほどね。ゴミ収集の作業員にありがとうって手紙をつける人も出てきたそうですね。

木曽:あと、単純に外食が減ったかな。

中島:私もこれまで、外食が多かったんですよ。それが毎日、朝も昼も夜もご飯をつくっている。朝ごはんを食べながら、お昼ごはんの段取りを考えるようになって。限られた時間でちゃちゃっとつくって、洗って、コーヒーを淹れて、また仕事に向かうこのリズムが結構好きだなと。自分のコントロールで一日を過ごせている感じがしますね。食事以外も、スーパーは20時に閉まっちゃうし、郵便局は15時に閉まっちゃうし。段取りを考えなくても生きていける東京で、いろいろと段取りを考えて動くようになった。

増村:それって、まさに地域の暮らしですね。

中村:先日、長崎に帰省したんですが、東京の便利さが際立って見えて。乗ろうと思っていたバスに乗り遅れて、時刻表を見たら、次のバスは2時間後だったんです。コロナ禍を経て、地方移住を検討する人が増えるとは思うんですけど、やっぱり東京は便利だからって見方もあるだろうなと思った。

名取:どこに住んでいても、大きな意味においては同じかなと思っていて。どこに住んでいても地域性とか、その地域の共同体としての意識は感じられるし、逆に全体性というか、どこに住んでいても繋がっているから。

中島:世界中どこにいようが、繋がっているって感覚?

高垣:インターネットの世界って、どこにいても同じ情報を共有できるから、フラットですよね。都市部でしんどいのって、コミュニケーションが過剰だってことだと思うんですよ。五感をフルに働かせると、刺激がありすぎて疲れちゃう。その過剰だったコミュニケーションをオンラインに移行することで、やや負担が軽くなる。

名取:多分、みんなそうだよね。人それぞれにあったバランスってあるよね。

増村:過疎の「過」のいき過ぎている物事と、「疎」のなさすぎるところと、それが両極端なのかもしれませんね。それと、そこにあるかないかということ以上に、自分がどのくらいのバランスを求めるかってのも大きいですね。自分自身の価値観をどこに置くか。

中島:確かに。

高垣:バスを2時間待つとか、慣れれば待てるんですよね。1本逃したら、逃した時の時間の使い方を知っていれば対応できる。いずれにしても、自分がどういうものが好きかって、考えさせられたかもしれないです。自分にとって何がフィットして、何が欠落していて、何が必要なのか。

中村:確かに、大事にしていることが明確になったかなと思っていて。東京は、地方に比べるとフラットだなと感じているんですよ。社長さんが、普通に行列に並んでいたりするし。田舎の社長さんって絶対に行列に並ばないですもん。俺を誰だと思ってるんだ、みたいな。


人と人との繋がりがフラットであること

名取:直接的なコミュニケーションにおけるフラットな関係と、オンラインコミュニケーションにおけるフラットな関係ってイコールなのかな。そもそも、オンラインコミュニケーションがフラットだと感じる理由ってなんだろう。

中村:学校の先生と生徒の関係で考えると、いわゆる先生と生徒って関係性ではなくて、生徒と同じ立場で、先生は答えを持っていませんよ、一緒に探していきましょうという考え方、つまりプロジェクト型だとフラットなんだよね。企業でも、社長や部長ばかりが話すオンラインコミュニケーションだと、やっぱりオンラインはダメだねってなると思うんだけど。

中島:自分の話をみんなが聞くって感じではなくて、オンラインでみんながどんどん話せば、この画面にしても、誰かだけ大きく映っているわけでもないし、

木曽:構造上フラットになっている。

高垣:そう、オンラインって、通常の目線では考えられない視野のある設計ですよね。

中村:Google Meetの、全員の顔が一画面で見れる「Google Meet Grid View」って、すごく画期的かもしれないね。フラットな環境の価値がドカンと上がったっていうか。ちなみに、オンラインコミュニケーションで会ったことのない人と話すのが難しいって件、twitterがきっかけで営業に繋がった人だと、それが全くない。どんなマインドを持っていて、どんな情報に興味があるかがなんとなくわかっているから。だから人とのコミュニケーションでは、前提条件の整理がすごく大切なんだなと思って。

木曽:相手の前提がわからないと打ち手が限られる。

名取:オンラインコミュニケーションにおける打ち手もあるんだろうね。ただ、何が最善の策かって議論よりも、アフターコロナ時代に、このオンラインコミュニケーションをどう活かせるか、マイナスな部分があるなら、どうプラスに転じることができるかってことが気になっているかな。このオンラインコミュニケーションは自分にとってどんな位置づけで、どんなことが足りてなくて、どんなことが実現できているのか、人それぞれ明確になった。でも、それによって何か大きく変わったかというと、変わっていない気がする。浮き彫りになっただけで。コロナ禍における、代替としてのオンラインコミュニケーションって、別軸な気がするんだよね。

中村:それと、リアルとオンラインのコミュニケーションでは、マナーが違うよね。リアルのコミュニケーションだったら空気感を読んで、例えば上司がしゃべってる時は黙ってようとか。それとオンライン上のマナーは違う気がする。

中島:伝わらないから違うのかな。伝わるものが違うからマナーが違うのかな。

中村:外国人と日本人のコミュニケーションがうまくいかないのと同じように、言語が同じでも印象が変わるんだろうなと思っていて。

木曽:そうですね。


お金の使い方を意識すること

中島:話は変わるけど、休業中の店舗がたくさんありますね。彼らがどんな思いで休業に踏み切ったのかとか、SNSを通じて見れるようになりましたよね。そうするとより応援したくなるというか。店舗のあり方とか、お客さんとの関係性とか、そもそもどこでものを購入するか、変わってきたなという気がしていて。

増村:お金の使い方、みなさん変わりました?

高垣:在宅時間を充実させるものを購入したり、外食を一切しなくなったので、食材を購入するんですが、生もの、野菜とか新鮮なものはスーパーで、それ以外はまとめてオンラインで購入するようになりました。

名取:俺はぜんぜん変わらないんだよね。購買行動は変わらず、いつも交際費にお金を使っていたんだって気づいた。ただ、交際費が浮いたから、それを違う使い方に転換するかっていうと、今のところそういう意識には向かない。多分ね、人とのコミュニケーションにお金を払っている気がする。

中島:みんなの家計簿を見たら面白いかも。

増村:私は、お金の使いどころは、変化はないですね。ただ、地域の店舗がテイクアウトを始めているので、より地域の中でお金を使おうという意識があるかもしれません。あとは、さっきの畑の話にしろ、家の外装修理をしていたりとか、生きていくためのバックアップ手段というか、何かあったときに家族が困らないとか、生きていけるみたいな方向に気持ちやお金が動いているのかなって。

中村:名取さんの交際費は、この事態が収束したら、また使うようになる?

名取:そうね。だって、欲してるのが自分でわかるもん。


家族、子ども。お任せにしてきたけど、大切なこと

木曽:ちなみに、一人暮らしの人と、家族のいる人でこの状況の感じ方は違うと思うんですよね。一人暮らしの人は孤独感を感じて、家族のいる人は逆に、家族とずっと一緒にいることのストレスを感じているんだろうなと。

名取:子どもが外に出れないって、大人以上にストレスだと思うんだよね。だから何かを提供してあげたい気持ちはあるんだけど、親が提供できることなんてたかが知れているなって感じる。ちなみに船をつくってくれって言うから、木っ端で船をつくったんですけど。

一同:すごい(驚)!

中村:僕は、今まで子どもとの時間をどうつくるかが悩みだったけど、子どもがいない時間がない。逆転現象が起きていますね。

増村:働く母親っていう意味では、本当にみんな大変だと思いますね。例えばお昼ごはんは、私なりに自由で、手の抜きどころではあったんですけど、外で遊んでいた娘がお昼に帰ってきて、「お母さん、まだごはんつくってないの?」って怒られて、それでパスタつくると「またこれ?」みたいな。「いや、パスタは3日前だったよね」って。

それと、今まで学校にお任せにしていたこと、例えば朝起きて、登校するっていう生活のリズムも含めて、学習は学校に任せていたんですよね。解答つきの宿題に丸をつけるだけじゃなくて、今は予習も含めて、家庭で見なきゃいけないものになっていて、全責任が戻って来ている感じがあって。

名取:親の怠慢を感じますよね。

増村:そうそう。

名取:教育っていう観点で時間を割いてこなかったなって。何もできてなかった、全部お任せだったんだなって気がする。

木曽:なるほど、面白いな。


今、地方が動くべきとき

中村:家庭内はもちろんだけど、コミュニケーションとか対話の価値って行政とか議員、政治家の人たちにおいても今回、注目されていますね。

木曽:どんなスタンスでどう発信するか、人というかリーダーのあり方が問われていますね。

中島:自宅で、国会中継をずっとつけっぱなしにしているんです。すごく身近で大事な話題を審議されているのを、ちゃんと見たいと思ったんですよ。

木曽:国と地方の関係も面白いなと思いましたね。国の方針を待たずに地方で決めちゃうこともあるし。

名取:昨日、人口900人の岡山県新庄村の人と話をしたんだけど、特別定額給付金の給付は、5月13日時点で、90%終わってるって。国の布製マスクも届いてないよって話をしてたの。そのスピード感はすごいよね。

木曽:衝撃ですね。

中島:中央集権ではなく、地方が責任を持って動くって、あるべき姿だなと思いますね。地方創生臨時交付金(新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金)にしても、最終的な使い道は、地方に委ねられている。こういうのがもっと加速して、地方が知恵を絞って、いい使い方をしてくれたらいいなって感じました。

2時間、あっという間に過ぎましたね。次回のテーマは、働き方はどう変化したのか。乞うご期待ください!

中村:ちなみにね、僕も最近、植物のタネを購入したんですよ。

名取:ほらね、生き物に飢えてるんだ。

木曽:ちなみにどんなタネですか?

中村:えーと、オペルクリカリア・デカリーっていう、マダガスカル原産の多肉植物。

木曽:ぜんぜんわかんない。

高垣:育たないよ、それ。

中村:あと、パキポディウム・サキュレンタム。

中島:呪文みたいですね。

(次回へつづく)

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