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なぁ熊田、こんな話し信じる?

私の高校時代のクラスメイト、タケルは唐突に聞いてきた。ちなみに席は隣。

は?なにを?唐突過ぎて訳がわからない。タケルは話を続けた。

熊田、呪われたアイテムってあると思う?オレさー手に入れたっぽいんだよねー。

私は聞き返した。呪われたアイテム?マンガやアニメでてくるようなヤツ?強い力を与える代わりに呪われるとかってもの?

そーそー。そういうやつ。熊田は特殊警棒ってやつ知ってる?よく警備員とかが腰から吊しているもので、手に持って振ると長くなる棒。

あー、なんか見た事あるかも。イメージは出来たわ。で、それのどこが呪われてるって?

オレの地元の先輩がさー、高校卒業するからもう要らないってんでオレにくれたの。その警棒。タケル、この警棒を持っていると嫌でもお前は強くなるぞ、ってね。

私は呆れながら言った。あー確かに警棒持てば武器だし強くなるよねー。いわゆる「伝説の勇者の剣」みたいに。そういう事でしょ?

タケルは否定した。いや、そーじゃないんだよ熊田。その警棒、持ってるとやたらと絡まれるんだ。いろんなやつに。

ここでタケルの容姿について触れよう。髪は金髪、両耳はピアスだらけ。教師側から見たら「ヤンキー」のカテゴリーに入るタイプ。特に問題を起こす事はなかったが、大人の決めた「納得のいかない」ルールには逆らう生徒だった。

彼の趣味はダンス。特にストリートダンスをしている。放課後はダンス仲間とつるんで閉店した店舗の前で踊るのが日課だった。

で、警棒を貰ってから暫く経った頃。その日も夜遅くまでダンスをして、さぁ帰ろうとなった時。深夜のアーケード街を一人歩いていると、視線を感じる。

視線の先を見るとサラリーマン風の男がタケルを睨んでいる。なんだアイツ?とタケルが睨み返すと男がウォー!と、叫び出し急に殴りかかってきた。相手は酔っているようだった。

タケルはとっさに避けて、思わず反射的に相手を殴ってしまった。崩れ落ちるサラリーマン。そのまま気絶してしまった様だ。

突然の事でタケルも慌て、男をそのままにして走って家まで帰った。

家に着くととりあえず自分の部屋に戻り、椅子に座った。放り投げたスクールバッグの中から例の警棒が覗く。

タケルは、まさかね?と思いながら警棒を見つめた。単なる偶然だろと。

また別の日。バス停でバスを待っていると他校の生徒がタケルを睨んでいる。見るからにヤンキーだった。

ヤンキーは案の定、絡んできた。テメー何こっち見てんだよ!やんのか?コラァ!

タケルも売られた喧嘩!とばかりにヤンキーと揉み合いになった。相手は決して弱くはなかったが、結果タケルが喧嘩に勝った。

やはりその時もスクールバッグの中には例の警棒があった。

その後も似たようなシチュエーションで様々な人に絡まれ続けるタケル。決まってその警棒を持っている時、トラブルは起きた。

私は、えー!何それ、例えは悪いけどRPGで次々にモンスターと遭遇して戦闘が始まるみたいな感じじゃない!呪われたアイテムがモンスターを呼び寄せる、みたいな。

タケルは、そーなんだよ熊田。警棒がいろんなヤツを呼び寄せてんだよ、そして喧嘩っていうかトラブルに巻き込まれる。結果的に喧嘩の勝負勘っていうかそうゆうのは鍛えられたけどな。

だけど、オレが好きなのはダンスであって、喧嘩じゃない。熊田、オマエこういう話し好きだろ?なんかアドバイスしてくれない?

うーん、タケル、私は怖い話しや不思議な話は好きだけど、霊感とかある訳じゃないからなー。
とりあえずその呪われた警棒、捨てちゃえば?

タケルはうーん、とひとり何かを考えているようだった。

その後、タケルに呪われた警棒の話を聞いた所、地元の後輩にあげたとの事だった。何でも喧嘩が強くなりたいって言ってる子がいたそうで。

タケルも自分が先輩から言われた様に、後輩に言った。この警棒を持っていればオマエは嫌でも喧嘩が強くなるぞ、と。

‥その後の警棒の行方は知らない。


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