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鎖骨







「くっ……う、ここは…?」

私は目を覚ます。
暗い部屋。壁も床も湿った石で出来ている。

頭に強い痛み。
殴られたのだろうか。
だがその頭部に触れる事は出来ない。

両の手首が後ろで縛られている。
私は石造りの部屋の壁に手首を縛られた格好で括りつけられている。
どうしてこうなったのだろう。
私はただ散歩をしていただけだと言うのに。

思い出した。
散歩中、しゃがみこんで花を見ていた瞬間。
後ろから車が近づいて来たと思ったら、急に車のドアが開いて何か鈍器のようなもので頭を殴られたのだった。

誘拐?
一体誰がなんの目的で?
言っておくが身代金など期待出来ないと思う。

暗い部屋と言ったが、明かりはある。
それは、私の5m程先にある階段の上から差し込んで来るであろう光。
昇り階段があると言う事は、ここは地下室なのだろうか。

なんとか、なんとか脱出出来ないだろうか。
私は懸命に手首を動かす。

ダメだ。
手首は縄ではなく鎖でつながれているようだ。
とても硬い。
動けば動くほど手首に食い込んで来る。

どうする?
大声を上げてみるか?
私を攫った犯人が居ない事にかけて助けを呼んでみるか?

いや、場所がどこだか、今が何時だかも分からない。
叫んでみても誰も来ない可能性もある。
無駄に体力を消耗するのも良くはない。

それに、もしも犯人が居たら何をされるか分からない。
最悪、さるぐつわはされていないようではあるが、こんな事をする犯人だ。何をしてくるか分からない。

手首の痛みに耐えて、苛立たしげに、もう一度手首の鎖を思い切り引っ張ってみる。

ゴトッ

「……?!……外れ……―――?!」

私の手首を縛っていた鎖は、その拘束を解き、音を立てて床に落ちた。だが鎖にしては音が軽い。ジャラリ、と言う様な音はしない。
振り替えってよく見てみれば、それは

骨だった。

骨を編まれて出来た鎖だった。

骨の鎖…

…誰の?
何の、骨…?

私はこれから一体、どうなる?










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