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【 悪なき殺人 】 感想vol.071 @シネ・リーブル梅田④ 21/12/22

19/仏・独/シネスコ/監督:ドミニク・モル/脚本:ドミニク・モル、ジル・マルシャン/撮影:パトリック・ギリンジェリ

前評判の高さにずっと気になっていた作品。今年はフランス映画を全然観れていなかったので、良い機会かもしれないと思い、観賞に至る。

ストーリーについて。フランスのある山中にある寒村で、吹雪の夜に一人の女性が失踪し、殺害された。この事件の犯人として疑われたのが農夫のジョセフ。彼は夫のあるアリスと不倫関係にあった。彼女の夫であるミシェルは、その事実を知りながらも、自身はネットで出会った女性と、チャットを通して恋に落ちていた。女性がお金がないとつぶやけば、すかさず彼はプリペイドカードを利用して彼女にお金を渡していた。そんなチャット相手の女性は、実はアルマンという青年がなりすましていたもので、彼はフランスより遠く離れたコートジボワールのアビジャンという都市に暮らしていた。彼には忘れらない女性がいた。その女性は、フランス人のパトロンの元、優雅な暮らしを送っていた。一方、エヴリーヌは旅先でマリオンを出会い、二人は親密な関係になる。エヴリーヌのことを忘れられないマリオン。衝動を抑えられず、エヴリーヌの元へと向かう彼女。しかし、エヴリーヌは夫のある身。気楽な関係が良かったと言って、マリオンの来訪を歓迎しない。失意の中街を彷徨うをマリオンの前を、運転中のミシェルが偶然に通りかかる。動転する彼。マリオンの顔立ちは、チャット相手の女性と瓜二つであったのだ。合いに来てくれたのかと、一人上気したジョセフ。夜となり、彼はマリオンの泊まるトレーラーハウスへと向かうのだが、そこで口論の現場を目撃する。ハウスの中にいたのはマリオンとエヴリーヌであったのだ。その晩は、吹雪の夜であった。

接点のないように見える人物たちが、実は物語の上に円環状に配置され、その点から点への繋がりで物語の全体像を見せるという、実によく練られた作品。事件そのものに不可解さを感じるような導入にはなっていないので、ミステリーと呼ぶべきかは不明であるが、展開の読めなさには敬服する。ただ、私が気付けなかっただけなのかもしれないが、ミシェルとエヴリーヌのつながりが、今一つ分からなかった。何だか親密な描写があったのだが、そこに至る経緯が不鮮明であったと思う。そこ以外に関しては、特段文句もないのだが。

エヴリーヌ役を演じたヴァレリア・ブルーニ・テデスキが個人的にはお気に入りだ。彼女は夏に観た『Summer of 85』にも出演していたが、なんというか隙のある女性を演じるのが上手い気がする。失礼な話、美人だとは感じられないけれども、その、常に泣き笑いの様な表情を浮かべた気怠さが、妙に艶っぽい。アルマンを演じたアフリカ人の青年も印象深く残る。

脚本と演技がしっかりとしいれば、派手なCGや視覚効果がなくとも、面白い映画が作れるということの非常に良い見本なのではないだろうか。年の瀬迫る師走の夜に良い映画に出会えて幸せに思う。

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