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【 野球少女 】 感想vol.028 @あべのアポロシネマ② 21/3/5

19/韓/シネスコ/監督:チェ・ユンテ/脚本:チェ・ユンテ/撮影:ハン・スンヨン

ピッチャーの投げる一球。そこに込められた想いはきっと届く。速くとも、遅くとも。

球春到来。野球好きなら観ねばなるまい。
選抜高校野球も、入場制限こそあるものの、有観客での開催の運びとなった。喜ばしい事だ。
韓国も日本と同じく野球大国。『ミスターGО!』は、ゴリラがプロ野球で活躍をするという、色物であったが、思いの外に感動的な作品で、記憶に残っている。

監督は、本作が長編デビュー作であるらしい。所々の繋ぎは怪しかったりもしたが、全体として丁寧に物語をまとめていたので、好感が持てます。
主演のチュ・スインは『梨泰院クラス』に出演していたらしいが、私は観ていなので、その事については何とも。じゃあ、書かなきゃいいじゃんて感じですけど。

ストーリーについて。天才野球少女と世間に持て囃されて、その青春の日々を野球にだけ捧げてきた少女。高校卒業を目前にした彼女の夢は、当然プロ野球選手になる事。しかし、女子という、ただそれだけの理由で、実績は十分であっても、テストを受けさせてすら貰えない。友人、家族や監督からも、野球を諦めて、現実を見る様に諭されるが、やはりどうにも自分の夢を捨てきれない。女子野球の選手ではなく、女性のプロ野球選手になりたい、という願いが。そんな時、新たなコーチが就任する。彼もまた、プロへの夢を諦めた過去を持っていた。彼女の直向きな姿に心を動かされた彼は、どうにかしてスカウトの目に彼女の存在を知らしめたいと、二人三脚での特訓の日々を始める。そしてとうとう、彼女はテストを受けるチャンスを手にする。

男性と女性では、どうにも埋める事の出来ない、体格差というものがある。当然、速球にも限界がある。だからこその逆転の発想で、遅球を駆使して男性に挑もうという姿勢には頭が下がる。
日本にも「ナックル姫」と呼ばれた、吉田えり選手がいた。彼女は世間一般がいう所のプロ野球選手にはなれなかったが、社会人や独立リーグで男性と一緒に試合に出ていた事は、実に誇らしい事だ。
作品の中では、彼女がプロとしてどんな結果を出したのかは描かれていない。華々しいものになるのか、散々たるものになるのか。それもこれも、想いの力が作用するのか。
初志貫徹は素晴らしい。されどそれには、それ相応の犠牲も伴う。私も見習わねばなりますまい。じんわりと染みわたる良作でありました。

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