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【 藁にもすがる獣たち 】 感想vol.026 @梅田ブルク7② 21/2/23

20/韓/シネスコ/監督:キム・ヨンフン/脚本:キム・ヨンフン/撮影:キム・テソン

金、金、金。地獄の沙汰も金次第。そうか、そうかね。

日本の同名小説を基にした韓国映画。原作は未読であります。
予告篇を観て、こいつは大いに期待出来る!と、興奮気味に観賞。
されど、結果は芳しいものではなかった。
原作がそうであるのかどうかは知らねども、ノワール映画を意識したのか、時系列を組み替えた、所謂ノワール編集となっている今作。各登場人物の背景にフォーカスするという点では、この演出は優れていると思うものの、この作品では、それ程人物描写に迫れていないと感じてしまった。会話から分からせたいという意図は伝わるが、肝心な所があまり伝わってこなかった。核心的な所がずっと、はぐらかされている感じ。むぅ、惜しいなぁ。

ストーリーについて。サウナのロッカーに忘れられたバッグ。その中には10億ウォンもの大金が入っていた。失踪した恋人が残した多額の借金により、取り立てに追われる出入国審査官の男。暗い過去を清算し、新たなる人生を夢見る女。道半ばで家業の魚料理屋を廃業し、サウナでアルバイトをする男。株式投資の失敗で家庭崩壊し、夫から暴力を受ける女。それぞれがそれぞれの欲望を剥き出しにし、あの手この手で大金を手に入れようと激しくぶつかり合う。果たして最後に笑うのは誰だ。

邦画にせず、韓国で制作した点は大いに評価出来る。
チョン・ドヨンもエロティックで素敵。『アシュラ』の演技が最高であった、チョン・ウソンも渋い。ペ・ソンウも朴訥な男を好演。シン・ヒョンビンも、とっても可愛らしかった。
また、画作りも恰好良く、夜のネオンの取入れ方なども、非常に濃密な雰囲気を醸し出せていた。
でも、前述の通り、脚本が今一つなのであった。俳優陣が良かっただけに、全体のトーン造りも良かっただけに、どうにもこの結果は承服し難い。
当然の事として、設定は日本から韓国に置き換わっているが、それ以外の部分、つまり、心理描写の部分は、原作に忠実に描いたのだろうか。韓国映画にしては突き抜けが足りないと感じたのはその為かも知れない。
チョン・ドヨンがシン・ヒョンビンに保険金をかけて殺害するシーンがある。その前に、チョン・ドヨンは自分と同じ「シロワニ」という鮫の入れ墨をシン・ヒョンビンに施す。「シロワニ」の説明の件は面白いのだが、これから殺そうという人間に、同じ入れ墨を掘るかね?狡猾な女性にしては、軽率な行動に感じられてしまった。まぁ、何れにしても原作を読んでいないので詳細は不明ですが。

面白かったのか、面白くなかったのか。まあ、総じるならば面白かったのか。

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