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【 ホモ・サピエンスの涙 】 感想vol.013 @シネ・リーブル梅田② 20/12/16

19/典・独・諾/ビスタ/監督:ロイ・アンダーソン/撮影:ゲルゲイ・パロス

生きてる事は哀しいね。だけど、やっぱり楽しいね。

あらゆるものを排除して、行き着く先にあるのは、やはりこんな映画なのだろうか。絢爛さは悪ではないし、豪華さも害ではない。適材適所。生きている人間を、そのままに描くとしたら、こう云うシンプルさに到達するのは、当たり前の事か。う~む。色々と考えさせてくれますな。

念願叶って、北欧映画を鑑賞。何故だか惹かれてしまう。北欧映画の多くは、画面に映る空には雲が多くて、鬱々とした内容のものが多いからか?言語の発語によるものか?理由は知らねど、昔から好きなのだ。渋谷のユーロスペースで行われているノーザンライツには、良く通った事を思い出す。また行きたいものよ。

正直、あまりロイ・アンダーソン作品には詳しくない。前作『さよなら、人類』も観ているはずだが、さして記憶に残っていない。映画も、観るタイミングが重要で、面白いと思える時期とつまらないと思ってしまう時期がある。たまたま『さよなら、人類』は後者だったのか。記憶にないので、確証はないが。

シュール、オフ・ビートと形容される、ロイ・アンダーソン作品。彼の意図した事が、結果として人々にそういう印象を与えていると云う事。狙っているのだとしたら、あざと過ぎる。そもそも狙っても、こんな風にはなかなか出来ないし。これが才覚と云うものか。

ストーリーについて。日常に生きる人々の機微を、優しい眼差しで見つめる。と云うもの。これだけ!

映画の作りが実に特殊。ワンシーン・ワンカット。画面はフィックスで、しかもパン・フォーカス!空気による遠近しか存在しない。絵画的と云うか、嘘みたいな画面構成。嫉妬を超えて、憧れを感じてしまった。こんな表現で勝負してみたいものだわ。ただ、何となくだが、スタンダード・サイズだったらどうだったろうか?と鑑賞しながら、思ってしまった。もっと画角を狭めた方が、各シーンの主題にフォーカス出来た様に思うけれども。まぁ、余白の空間が、情緒を生み出している側面もあるので、そうとも言えないか。

多くを語らないナレーションが、各シーンに深みを与える。盛り上げ過ぎず、足りなさ過ぎず、良い塩梅。短い言葉に程、言霊は宿るのだろうか。私も詩人になりたいです。

劇中で使用される楽曲もシャレオツ。カフェ?から聞こえてきた『ザ・デルタ・リズム・ボーイズ』の『Tre trallande jäntor』に、通りがかった3人の女性が、「踊ろうよ」と言って踊り始める。それだけのシーンだがグッと来過ぎる。曲が良いのは言う迄もないが、その瞬間的な感情が、実に儚く感じられる。強い衝動ではなく、染み渡る様な感動。もっと日々の中に横たわる、見落としがちな感情に目を向けて、耳を澄ませて生きて行きたいと思いましたよ。

じっくりと、自分自身を見つめ直した様な気持ちになれる、佳作でありました。宣伝コピーのおっしゃる通り、やっぱり、愛がなくっちゃね。


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