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【 ストックホルム・ケース 】 感想vol.011 @シネ・リーブル梅田② 20/12/1

18/加・典/シネスコ/監督:ロバート・バドロー/撮影:ブレンダン・スティーシー

何もない。何もないが、優しさを持っていれば、それで良いじゃない。

洋画を全然観ていない。「何か観たいな」と思っている所に、興味を惹かれる映画を見つけた。私は北欧映画が好きなのです。とは云っても、この映画は純正北欧と云う訳ではないけれども。まあ、それは良いか。

ストーリーについて。心理学用語にもなっている「ストックホルム症候群」。その名前の由来となった、スウェーデンで実際に起きた事件を題材とした作品。何をやっても上手く行かない男。自由の国アメリカへ渡る事を希望と信じて、銀行を襲撃する。彼は行員3名を人質に取り、刑務所に収監されている仲間を釈放させる。警察と交渉しながら立て籠りを続ける内に、いつしか強盗と人質の間に不思議な連帯感が生まれて行く。

緊迫した状況の中で、犯人からのさりげない優しさに触れたり、警察や政治家の、嘘ばかりを並べた煮え切らない態度を見せられると、犯人側に同調してしまうのも頷ける。まあ、実際に人質にはなりたくはないけれども。

作品の中で描かれているのは、事件の部分のみなので、導入もそこそこに本筋が始まる。行き成り物語が盛り上がるので、その点は良いのだが、主人公が警察に拘束された所で映画がバッサリと終わる。「もう少し余韻を付けてくれよ~」と、ちょっと残念。確かに刑務所に人質の一人が面会に行くシーンがちょこっとあったけれども、創作でも良いので、その後をもう少し描いて欲しかった。

てっきり群像劇になるのかと思ったが、大半が強盗に押し入った男と人質の女性が中心となって話が展開して行く。残りの人質が、あまり物語に絡んでこないのが、気になった。登場させるなら、それなりに役所を与えて欲しかったものよ。

主役の強盗犯を演じたのが、イーサン・ホーク。「憎めない奴」と云うのをしっかりと演じ切っていて、非常によろしい。監督の前作『ブルーに生まれついて』でも主演を張っているとの事。こちらは未見なので、近い内に観ておきたいと思います。

時代背景に則した美術等は好感が持てる。逃走車として要求するのが『マスタング』。やはり格好良いクルマは時代を超えても格好良いままだ。また、当時を象徴する音楽として、ボブ・ディランの曲が度々劇中に登場する。反骨の精神は普遍だ。現代に生きる吟遊詩人。自分にもそんな才覚があったとしたら、どんな人生になっていたのでしょうか。全然関係ない話だけれども。

行った事はないけれども、いつの日にか行ってみたい北欧の国々。それ迄は映画を観て思いを馳せていよう。なかなかの良作であったと思います。

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