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【 ライダーズ・オブ・ジャスティス 】 感想vol.081 @梅田ブルク7⑤ 22/2/3

20/丁・典・芬/シネスコ/監督:アナス・トマス・イェンセン/脚本:アナス・トマス・イェンセン/撮影:キャスパー・タクセン

「デンマークの高倉健」と呼び表されることもある、マッツ・ミケルセン。ハリウッド作品ではなく、母国のアクション映画に出演しているとなれば、これは観ずにはおれまいて。齢60間近になろうとも、恰好良い男は恰好良いのだ。漢惚れとはこの事だね。という事で、観賞に至る。

ストーリーについて。
ある日、乗車していた列車が事故に遭遇し、目の前で母親を亡くした少女マチルデ。彼女の父親のマークスはアフガニスタンへと派遣されていたが、訃報を受けて帰国する。悲しみに暮れる娘と上手く慰められない父親。ギスギスした関係のまま日々を過ごしていると、列車事故の被害者である数学者のオットーがマークスの元を訪ねる。オットーは大学では冴えない人物であると爪弾きにされていたが、実は優秀な統計学者であった。彼は独自の調査で、列車事故は本当は事故ではなく、乗客の中に殺人事件の重要証人がおり、彼を殺害するために、「ライダーズ・オブ・ジャスティス」というギャング集団が仕組んだものであるという事を、マークスに打ち明ける。妻の無念を晴らすべく、マークスはオットーら協力し、事件に関係する全てのものを殺害する復讐の道を歩み始めるのであった。

今作の題名が「ライダーズ・オブ・ジャスティス」であり、劇中に登場するギャング集団の名前でもある。観賞中もずっとしっくり来なかった。邦題がダメなのか?と思い調べてみるも、デンマーク語の原題も「Retfærdighedens Ryttere」であり、訳すれば「ライダーズ・オブ・ジャスティス」なので、本当はマークス達こそが正義の使者なのだ、という事を言いたいのだろうか。うーん、なんかあんまりなんだよな。
このもやもやが何であるかと考えると、登場人物たちの心情がブレまくっていた事が要因なのかも知れない。熱しやすく冷めやすい。説く様で、そうではない。ふらふらとして芯がない感じが続くので、そこが気になったのだろうか。だが、実際の人間とはそんなものか。人によって態度を変える、二枚舌、三枚舌の奴なんて、ゴロゴロしている。あぁ、気分が悪い。
ん?そうか。立ち位置によって、正義は変わるのか。そうか、そうか。だから、この題名で良いのか。そうか、そうか。

あまり詳細は語られていないのだが、マークスは単なる軍人ではなく、一人で一個小隊に匹敵する位の強者なのであった。彼が銃を構える際も、映画的な腰高に構えるのではなく、きちんと銃床を肩に当てて撃つのが、プロっぽくて怖過ぎる。殺しに対して抵抗がない。コールドブラッドではないか。
その様を観ていると、昔、新宿のK's cinemaで『アルマジロ』というドキュメンタリー映画を観たのを思い出した。アフガニスタンに派遣されたデンマーク軍を追うドキュメンタリー作品であったが、塹壕に潜むタリバン兵に向かって、手榴弾を投げて爆殺するシーンがあり、これは観ても良いものなのか?と衝撃を受けたことを、今でも鮮明に記憶している。やはり、戦争は人の心を蝕むものだ。よくない、よくない。

国名を失念してしまったのだが、冒頭と末尾の場面はラトビアかエストニア(リトアニアでなかったことは確か)であった。これは、自転車を欲しがった女の子の願いによって、デンマークに住むマチルデの自転車が盗まれ、巡り着いて女の子の元に届くということなのだが、デンマークとの関係性がどうであるのかは知らないし、取り立ててその国、その場所に意味があるということではないのかも知れないのだが、妙に気になってしまった。単にデンマークよりも貧しいと言っている様にも受け取れるし、倹しくとも住む人々の心は彼らの方が豊かであると言っている様にも受け入れられる。個人的に、ヨーロッパの国交というものを調べてみようかしら、なんて気になってしまった。

ちょいちょい挟まれるギャクに、笑っていいものかどうなのか、思案に余る場面が散見し、もやもやする所が多い映画ではあったが、要するに、強く信じる事の大切さというものが感じられた。間違いも正当化すれば、大義となる。危ない思想だけれども、何か事を成す際には、必要な事なのだ。私も程ほどに信念を強くして生きたい。

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