見出し画像

【 劇場版 呪術廻戦0 】 感想vol.072 @あべのアポロシネマ④ 21/12/29

21/日/シネスコ/監督:朴性厚/脚本:瀬古浩司/撮影監督:伊藤哲平

2021年も、もう終わろうとしている。私事であるが、本日が仕事納めであった。2020年と何かが変わったようで、何も変わらなった一年。振り返ってみても、充実した仕事が出来たかといえば疑わしいし、私生活の中でも、楽しいと感じられたのは、片手で数えられる程度しかなかった。
今年劇場で観賞した映画は、これまでに55本。56本目として観賞したのが、本作。まさかこの作品が年内最後の観賞作品になろうとは思ってもいなかった。
後追いながらテレビアニメを視聴して、「呪術」と冠しているにも関わらず、特殊能力ではなく、ひたすらステゴロで殴り合うという、子供なら誰しも興奮するような単純明快さに、大人である私も気分の高揚を禁じ得ないでいたのだ。
予告篇を観れば、最早、シンジ君にしか見えない乙骨憂太のその姿。観ねばなるまい。いつもの様に、映画館へと入って行ったのであった。
なお、連載中の漫画は未読。本作の原作漫画も未読である。

声が優れていると書いて、声優。文字通りに、ずばりじゃないか。主役を演じた緒方恵美と花澤香菜が素晴らし過ぎる。緒方恵美は、ナイーヴな少年の役を任せたら、比肩する者はいない様に感じるし、事実そうだと思う。花澤香菜も、表面的には明るいのだが、どこかもの哀しい、幸の薄い女性を演じさせたら、右に出る者はいないんじゃないかと思う。この二人なくして、作品は成立していなかった様に思う。『呪術廻戦0』の映画ではあるのだが、その制作意義が、物語の枠を越えて、この二人のやり取りを聴く為に存在しているのではないかとさえ思う。

エンドロールを記憶することが叶わなかったのだが、スタッフクレジットを探していても、どうにも作画監督の名前が見当たらない。これだけの丁寧な仕事振りに対して賛辞を送りたい気持ちが抑えられないでいる。替わりに、制作会社のMAPPAに感謝の意を述べたい。素晴らしい動きでした。

ストーリーについて。幼き頃、病院で出会った乙骨憂太と折本里香。仲の良い友達同士であったが、憂太の目の前で里香は交通事故に遭い、この世を去る。その直前、二人は約束を交わしていた。「里香と憂太は大人になったら結婚するの」と。里香の強烈な愛情は怨霊と化し、憂太に取り憑く。その呪いの効果は凄まじく、憂太に危害を加えるようとする者を、悉く排除して行く。呪術高専の上層部も、彼の秘匿死刑を執行しようとするが、現役最強の呪術師、五条悟によって、憂太の運命が変わる。生きる希望を失っていた憂太ではあったが、共に学校で呪術を学ぶ仲間との出会いを通して、自ら里香の呪いを解くことを決意する。一方、かつて一般人を大量虐殺して高専を追放された最悪の呪詛師、夏油傑が憂太らの前に現れ、12月24日に新宿と京都で百鬼夜行を行うと宣戦布告をする。はたして、憂太は夏油の計画を止められるのか、そして、里香の呪いを解く事ができるのか。

テレビアニメの中では、禪院真希の事があまり好きではなかったのだが、今作を観て、考えが改まった。いい子じゃないか。狗巻棘も活躍する場面があり、へぇ、やるじゃないかと、見ごたえあり。ただ、アニメを視ていた時に思っていたことなのだが、呪言というのは、祝詞を上げるのではなく、命令形を叫ぶというのが、なんかちょっと残念に感じるのは私だけであろうか。パンダはパンダ。

百鬼夜行のシーンでは、後に関わってくるであろうキャラクターが登場したりしていて、原作を観ていない私には分かりずらい所もあったのだが、市街戦というのは漫画やアニメの常套句であるので、引き込まれるのは当然であった。

物語後半の最大の見せ場となる、夏油と憂太の「そうくるか‼女誑しめ‼」「失礼だな、純愛だよ。」「ならばこちらは大義だ。」のやり取りには、目を見張るものがあった。お互いの主張がぶつかりあう、良いセリフ回しだと感じる。ただ、夏油の標榜する、呪術師だけの世界といのが、どうにも解せない。一般の人が生活している中で、嫉みや妬みが生まれて、そういったものが、呪いに転化するのではなかっただろうか。つまり、呪術師しかいない世界では、彼らの存在理由がなくなってしまうと思ったのだが、この辺りはどう回収するのか気になる所ではある。

熱くなった目頭を押さえつつ、劇場を後にすると、何故だか無性に「ゾんば」と呟きたくなった。

後日、なんだかまだ夢見心地でいたので、勢いに乗って原作漫画の『呪術廻戦0』を購入する。漫画本を買ったのは、随分と久しぶりな気がする。2018年に、さくらももこさんが亡くなられた際、『コジコジ』の新装再編版が発売されたので、それを書店で求めた以来だと思う。
Amazonは本当に優秀。注文したものが、すぐさま玄関先に届いていた。
原作の漫画は、コミック本1巻に収まる程度の長さしかないので、映画を観てしまった後では、読み味が薄かった。限られた枚数の中であるので仕方のないことではあるが、コマ割りのテンポ間が速いと感じてしまった。やはりアニメで観る方が、カットの間尺が取り易いし、動きのダイナミックさが表現できていて、私は好ましい。
映画の観賞中に、どうにもシンジ君ぽいセリフが多いなぁと感じていたのだが、漫画の中のセリフもそのままであったので、何だか安心した。緒方恵美が演じるにあたり、エヴァに寄せたのであっては、やり過ぎですもの。

物語の展開を知らないので、次に何が起きるのだろうかと、新鮮な気持ちで視聴できるのは、連載中の原作を読んでいない者の特権ではなかろうか。テレビシリーズが再開されるのを、心待ちにしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?