見出し画像

【 スパゲティコード・ラブ 】 感想vol.066 @シネ・リーブル梅田① 21/12/8

21/日/シネスコ/監督:丸山健志/脚本:蛭田直美/撮影:神戸千木

こんな感じの映画なんだろなとは予測はできていたのだが、実際に観てみないことにはどうにも判じ得ない。ということで観賞する。

ストーリーについて。フードデリバリーの配達員をする男。路上で弾き語りをする女。住まいを定めずSNSでのその暮らしぶりを呟く男。援助交際を繰り返し束の間の愛を欲する女。広告クリエイターの女。売れないスチールカメラマンの男。そのスチールカメラマンを頼りに上京する女。死にたい女子高校生とその死に方を考える男子高校生のカップル。将来の人生設計に悩む男子高校生。占いにはまる女。ピーナッツバターにはまる女。実るはずのない不倫にすがる女。東京を舞台に、もがき苦しむ13人の男女が織りなす群像劇。関係性のないように見えたそれぞれのものがたりが、解きほぐされ、一つの物語へと変化してゆく。

思った通りの感覚的な映画であった。セリフも象徴的で印象が残るように仕組まれている。部分的にはハッとさせられる箇所もあったし、へぇ、こういう見せ方もあるものかと感じたが、こういう構成の映画は正直辛いのだ。長尺でみるものではない、と私は感じてしまう。短編であればまだ頷けるのだが。

広告クリエイターがスチールカメラマンの男を叱責するシーンがあるのだが、この広告クリエイターが完全なる悪として描かれている所に注目したい。広告表現の全権を握るクリエイターが、全くもって売れてもいないカメラマンの個性を尊重する訳がないじゃないか。だって指名して呼んだ訳でもないし。その日初めて会った訳だし。氏素性も分からぬ実績のない男に出来栄えを左右するようなことを言われたくないのは当然ではなかろうか。彼女が言っていたことは正論だと感じたのだが、これは時代が受け付けないらしい。私も完全に自分の自由にできる状況ではないかぎり、上からの意向を汲み取って仕事をしている。私もすっかり牙を抜かれた飼い犬に成り下がってしまったということなのだろうか。そうであれば哀しいな。

一点、どうにも気になって仕方がなかったのだが、冒頭のシーンに満島ひかりが登場する。彼女がこの映画に参加していたことを知らなかったので、お?これは期待できるのか?と思っていたのだが、彼女はゲームセンターの中に居続けるだけで物語に絡んでこない。どうやらMV繋がりでの友情出演のようなのだが、そういうのは客寄せパンダ染みていて、私は好かないなあ。どうせ出すならもって芝居させてあげてよ。彼女はそういう俳優であると思うもの。

本作の撮影は神戸千木。私の敬愛する篠田昇が亡くなられた後の岩井俊二作品の映像美を担っているだけあって、東京の風景というものをエモーショナルに画面の中に収めている。素早いカットの中で移り行く情景映画が好きな方は観ていて損はないのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?